弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年3月29日

ヒエログリフを解け

アフリカ

(霧山昴)
著者 エドワード・ドルニック 、 出版 東京創元社

 エジプトでロゼッタストーンが発見されたのは1799年。ナポレオンのエジプト遠征のとき。
 そこには、3種類の文字が彫られていた。最下段にギリシャ文字、最上段はヒエログリフで、真ん中部は何か不明。学者はギリシャ文字は解読できたが、上の2種類の文字は、まったく分からなかった。
 この謎は、フランス人とイギリス人という2人の天才によって解明された。どちらも幼いときから神童として呼ばれていた。
 イギリス人のトマス・ヤングは世にまれな多芸多才の天才。フランス人のシャンポリオンは、エジプトを偏愛する一点集中型の天才。クールで洗練されたヤングと、熱血漢で激しやすいシャンポリオン。
 エジプトの文化は驚くほど「死」に執着している。ピラミッド、ミイラ、墓、神々、死者の書など、これらすべては、死を追い払い、ねじ伏せ、死後の世界で迷うことなく生きていくためのもの。祈祷文や呪文は、どれも死は終わりではないと訴えている。
 ファラオは、「あなたは、まだ若返って再び生きていく、また若返って永遠に生きていく」という呪文とともに死後の世界へ送られていった。だから、エジプトでは輪廻転生(りんねてんしょう)は信じられていなかった。もし信じていたら、魂が新しい肉体に宿るわけだから、わざわざ古い肉体をミイラ化して保存する必要はない。人間のミイラをはるかに上まわる数の動物のミイラがつくられた。ネコ、イヌ、ガゼル、ヘビ、サル、トキ、トガリネズミ、ハツカネズミ、はてはフンコロガシまで...。
 麻布でくるまれたネコのミイラが無数に出土している。
 ロゼッタストーンのギリシャ文字はやがて解読された。それによると、次のとおり。
 「この宣言は、神々の文字(ヒエログリフ)、記録用の文字(真ん中の段の文字)、ギリシャの文字をつかって堅牢な石版に刻み、永遠に生き続けるファラオの像とともに、最高位の神殿、二位の神殿、三位の神殿に置くものとする」
 楕円形のカルトゥーシュは、支持標識。この楕円形の中に入っているヒエログリフは、王の 名前をつづったもの。そして、クレオパトラが判明した。
 ガチョウと卵と思われていたのは、アヒルと太陽だった。この二つを合わせると「太陽の息子」。アヒルは息子を意味する。
 ヤングとシャンポリオンはライバル関係にあった。だが、天才の二人が競いあったことで、ヒエログリフは解明されたのだと、この本の著者はまとめています。そうなんでしょうね...。
(2023年1月刊。税込2970円)

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