弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年3月18日

古典モノ語り

日本史(平安)


(霧山昴)
著者 山本 淳子 、 出版 笠間書院

 たまには平安時代の貴族社会の雰囲気を味わってみようと思って読んでみました。
 京都の平安京跡地の発掘調査において、盃(さかずき)の皿(さら)部分に墨(すみ)で文字を書きつけたものが大量に発見されているそうです。文字は和歌なのです。
 絵やマンガ(絵)もあって、大変読みやすい本です。
 牛車に乗るのは平安京だけの風景。牛車に乗ることのできる人間は限られていて、庶民は乗れなかった。天皇もまた牛車には乗れなかった。天皇の乗り物は輿(こし)と定められていたから。なので、天皇を退位すると、牛車に乗ることができた。
 貴族の乗った牛車が石つぶての攻撃を受けることはあった。
 文化勲章は、文化の発展に大きく寄与したものが資格がある。この勲章のデザインは橘(たちばな)。皇族の一員だった葛城王らが天皇に願い出て、「橘」なる姓をもらった。葛城王は橘諸兄(もろえ)と改名した。
 庶民は排泄するとき、高下駄をはいていた。この高下駄は恐らく共同使用していた。
 平安京に犬は多く生息していた。ペットや猟犬としてではなく、汚物処理係だった。猫のほうは舶来の貴重な動物であった。なので、高貴な邸宅の中で、文字どおり「猫可愛がり」されていた。猫は貴重なので、幼少時に、「犬」の名で呼ばれた人は決して少なくなかった。「犬宮」は男性にも姫君にもいた。「犬」のつく幼名は、「長い歳月を重ねての成長」を意味するようだ。
 泔(ゆ)するとは、米のとぎ汁のこと。中国では、米のとぎ汁は、料理に使うものだった。
 髪の長い貴族女性にとって、洗髪は大変だった。
 清少納言や紫式部も登場する貴族社会の内実は、とても大変な競争社会だったようです。平安貴族の十二単衣からくるイ華やかな、そして気楽なイメージに騙されてはいけませんね...。
(2021年1月刊。税込2090円)

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