弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年2月25日

イノチのウチガワ

生物


(霧山昴)
著者 ヤン・パウル・スクッテン、アリー・ファン・ト・リート 、 出版 実業之日本社

 通常のX線よりも波長が長く、透過性が弱いため、骨などの硬い物質ではない、ちょっとした薄い皮膚でもうつるものを軟X線という。この軟X線撮影装置で撮った生物の写真。これまでのX線では採れなかった貴重な写真が満載です。
要するに、生物のウチガワをうつし出すのですから、すごいものです。コンピューターで調整せず、歯も骨も、そっくりそのままの姿で撮られています。
X線写真の撮影では、照射するX線量を調整する。照射線量が多いほど、X線は簡単に物を透過する。硬い物質のX線写真を撮りたいときには、照射線量を多くする。柔らかい物質や薄い物質を撮るには少ない量で足りる。
サソリは、クモに近い節足動物。クモの脚は8本だが、サソリも実は同じで8本、前の大きな「はさみ」は、実はあごから伸びた触覚(触肢)。
トンボには超強力な胸筋がある。これを使って、4枚の翅をそれぞれ個別に動かせるので、空中でどんな曲芸も演じることができる。そして、あらゆる飛び方をするあいだ、まっすぐなしっぽでバランスをとっている。一匹の大きなトンボは、1日で数百匹の蚊を食べている。
イモムシがチョウになるとき、羽化のあと、翅脈の管に体液がたくさん送られてチョウの翅をぴんとさせる。
タツノオトシゴは、食べた物を蓄える胃がない。食べたものは、そのまま腸へ向かう。タツノオトシゴは、小さな口で吸いこむだけ。常に食べていないと、十分なエネルギーが得られなくなる。
カメは、新陳代謝がものすごく低い。新しい細胞をつくり出すのに必要なエネルギー消費が少ない。
セキレイ(鳥)の骨はストローに似ていて、重さもほとんどストロー並み。中身はほとんどスカスカの状態。
鳥は腕の筋肉はほとんど使わず、胸筋を使って胸をはって飛んでいる。
コウモリは骨を細くすることで、できるだけ体を軽くしている。コウモリの翼は、手のひらが大きく進化したもの。コウモリの4本の指は非常に長く、親指だけが短い。
ノウサギとアナウサギは似ているが、少し違う。ノウサギは単独で暮らし、アナウサギは群れで暮らす。ノウサギはくぼみで、アナウサギは地中の巣穴で眠る。
モグラの手の指は各5本ずつのあと、6本目がある。
メンフクロウが実はやせた生き物であること、マルハナバチがくたびれた細い腰をもち、コウモリが大きな両手を使って飛ぶこと、シタビラメの全身の骨は、まるで芸術作品のよう。命の内側がこんなに本当は美しいのですね...。貴重な、未知のものへ誘(いざな)ってくれる大判の生物写真集です。
(2022年12月刊。税込2860円)

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