弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年2月20日

へんてこな生き物

生物


(霧山昴)
著者 川端 裕人 、 出版 中公新書ラクレ

 カラー版なので、カラー写真がたくさんあって、見ても楽しい新書版の生き物図鑑です。
 哺乳類なのに、花の蜜と花粉しか食べない小動物のハニーポッサムは、花の中に突っ込む長い「クチバシ」をもった不思議な格好をしている。
 ハリモグラは、モグラの仲間ではない。卵を産んで、母乳で育てる。赤ちゃんは、母親の腹の袋の中で守られながら、母親のお腹からにじみ出る母乳をなめるようにして飲んで成長する。ハリモグラにはREM睡眠が観測されないので、夢を見ない(はず)。
 ヒロバナジェントルキツネザルは竹を主食にしている。パンダみたいですね。食事の9割以上が竹。この竹は有毒なシアン(青酸)化合物を非常にふくみ、そのうえ猛烈に苦い。なので、地元民は絶対に、この竹は食べない。なのに、このキツネザルは美味しそうにかじる。哺乳類の平均的な致死量の50倍近いシアン化合物を消化できる、つまり毒を分解する腸内細菌をもっているようだ。
 屋久島にすむヤクシマザルは本土のニホンザルより一回り体が小さく、ずんぐりしている。
 ヤクシカはいつもサルの群れの近くにいる。サルが樹上で果物や葉を食べるとき、枝ごと落としてしまうことがある。また、サルの糞もシカが食べる。なので、いつも一緒に行動している。
 チンパンジーは、常時、にぎやかだ。騒々しい大型類人猿だ。
 テングザルは、他の動物が好むであろう糖分の多い、熟した果実はあえて避けている。
 ジンベエザメは、サメと言っても、プランクトンを主食とする「優しい巨人」。人を傷つけたという話はない。
 アマゾンマナティーは、アマゾン川の固有種で、植物だけを食べる。
 カカポは、世界唯一の飛べない鳥。
 ミナミシロアホウドリは体重が9キロもある。威風堂々で、気品あふれる鳥だ。
 サバクトビバッタは、その研究者である前野ウルド浩太郎が詳しい。『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)は、まことに面白い本なので、読んでいない人には超おすすめの本です。
 いやあ面白い本でした。世の中には、こんな奇妙奇天烈な生き物がたくさんいるのですね...。
(2022年8月刊。税込1320円)

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