弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年1月30日

オスとは何で、メスとは何か?

生物


(霧山昴)
著者 諸橋 憲郎 、 出版 NHK出版新書

 性スペクトラムという目新しいコトバが登場します。いったい、何を言いたいのでしょうか...。
 生物のオスとメスとは、単純に二分化しているのではないというのです。生物はオスからメスへと連続する特性を有している。つまり、性スペクトラムとは、オスからメスへと連続する表現型として「性」をとらえるべきではないかという新しい考え方を意味したコトバです。
 ええっ、いったい何のことでしょうか...。
 エリマキシギ(小鳥)には、オスなのにメスのような格好したものがいる。40%ものオスがメス擬態型だ。
 トンボでは、メスに擬態するオスも、オスに擬態するメスもいる。
 魚類では性転換がよく見られる。オスだった個体がメスに転換したり、逆にメスだった個体がオスに転換したりする。
 オスとメスとでは、オスのほうがはるかに大きいゴリラもいれば、チョウチンアンコウではメスが大きく、オスは圧倒的に小さいうえに、やがてメスの身体に吸収されて、精巣だけがメスの身体に残る。
 シャチやクジラは、メスを中心に群れを形成する。群れを率いるのは、最年長のメス。
 すべての生物に共通する性差は、オスは精子をつくり、メスは卵子をつくること。
  ハダカデバネズミは、身体の大きい女王ネズミだけが発達した卵巣をもち、繁殖することが可能で、そのほかのメスは卵巣が発達しておらず、子どもは産めない。そして、女王ネズミが産んだ仔ネズミを一生懸命に育てる。女王ネズミは、自分の糞を働きネズミたちに食べさせる。自分の女性ホルモンを糞に混ぜて食べさせることによって、働きネズミを操っている。
 役に立たない爺ちゃんシャチは、婆ちゃんシャチより、20年から30年も短命で終わる。
 人間(ヒト)の身体を構築している臓器や器官は性を有している。肝臓も骨格筋も、脳も...、ほぼすべての臓器や器官はオスとメスとで異なっている。つまり、細胞が性をもっている。脳を構成する神経細胞が性をもっている。
 性は固定されたものではなく、柔軟に変化するという性質をもっている。
 ヒトの性を制御しているものの本体は、遺伝的制御である。
 いやあ、驚きました。目からウロコの本でした。
(2022年10月刊。税込1045円)

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