弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年1月19日

僕らが学校に行く理由

人間


(霧山昴)
著者 渋谷 敦志 、 出版 ポプラ社

 いま、日本では少年の非行事件が激減しています。かつては毎日のように深夜に爆音を聞かされていましたが、暴走族という現象も見られなくなりました。子どもたちは、まるで去勢されたかのように家に閉じこもり、ゲームに終始しています。不登校、ひきこもりが日本社会の重大な病理現象の一つという状況が続いているのです。
 ところが、世界中を見渡すと、大勢の子どもたちが学校に行きたくてもいけないという状況がありふれています。戦争、そして貧困が原因です。
世界中には、就学年齢に達しているにもかかわらず、小学校に通っていない子どもが5900万人もいる。アフリカでは、サハラ砂漠より南の国の子どもの5人に1人は学校に通っていない。たとえば、南スーダン共和国の識字率は30%未満。国民も70%以上が適切な教育を受ける機会を奪われている。この国では内戦によって、16万人以上が国内避難民となり、220万人以上が隣国に逃れて難民生活を余儀なくされている。
バングラデシュでは、国民の7割近くが農村に住んでいる。そのほとんどが自分の土地を持っていない貧困家庭。子どもたちは自ら働きはじめる。5歳や7歳から働いている。それは学校にいけないことを意味する。
カンボジアでは、親から暴力を振るわれたりして、子どもたちがストリート・チルドレンになる。周囲の人間に対して強い不信感をもち、反抗的で暴力的なところがある。そして、人身売買の対象になっていく。
 アフリカのウガンダには日本の「あしなが育英会」が開設した「テラコヤ」がある。エイズなどで親を喪った遺児を支援して教育の機会を提供するもの。ウガンダでは、子どもの教育にお金がかかるので、そこを埋めようとする取り組みだ。日本政府はハコモノづくりよりも、こんな援助にこそ、もっと力を入れるべきだと私は思います。
ウガンダで学校を途中で辞めざるをえなくなった少女シャロンは、自分の夢を語った。
「私の夢はいつかまた学校に行って勉強をやり直すこと。そして、将来、医者になって家族を助けたい」
岸田首相は、軍事予算を増やすことしか頭にないようですが、もっと人間を大切にする政策にお金を使ってください。
バングラデシュで大洪水によって被災した少女マクーシャはこう言った。
「将来は、先生になって家族を助けたい。村の子どもたちに勉強を教えたい。そのためにも勉強をがんばりたい」
日本の子どもたちも、社会に大きく目を開いて、自分の存在を社会と結びつけて考えられるようになれば、すすんで学校に行きたいと思うようになることでしょう。
カネ、カネ。万事がカネ。そして、ガンジ・ガラメの校則。もうこんなのはやめましょうよ。もっと伸びのび、ハツラツと子どもたちが生きられる温かい社会を目ざしましょう。
目がキラキラ輝いている素敵な子どもたちの、いい写真をたくさん、ありがとうございました。
(2022年8月刊。税込2420円)

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