弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年12月24日

狩女のすすめ

人間


(霧山昴)
著者 ジビエ ふじこ 、 出版 緑書房

 いやあ、すごい女性(ひと)です。読んでいると、なんだか愉快になって、笑いとともに元気が出てきます。ユーチューブ「ジビエふじこチャンネル」も一度のぞいてみることにしましょう。
「バツ女、シングルマザー、女猟師」というのは、本人が売り出しているキャッチコピー。40歳にして狩猟そしてジビエの世界に出会い、45歳にしてママになったのです。いやはや、すごーい。
 著者は1回目の離婚のあと、母親(離婚経験者)から「男性を見る目を養いなさい」と言われて、店をもたされてラウンジを始めたとのこと。これまた、すごい母親です。たしかにラウンジで働いたら、男性を見る目は肥えてくることでしょう。
 そして、著者はいくつもの職歴があります。教育教材の営業、喫茶店、革細工教室、ブライダルで司会業もつとめています。だから人前で話すのは苦にならないのでしょう。マスコミの取材にも対応できた(ている)のですから、偉いです。
 2014年に狩猟免許もとりました。「狩女の会」を2016年に立ち上げるとロイター通信から取材を受け、マスコミに登場。やがて、首相官邸にも出かけて会議メンバーとして大胆に発言。並の人にはマネできませんよね...。
 今は猟師ですが、著者も、かつては、虫が苦手で、運動も苦手、魚をさばくのも吐き気がして無理だったとのこと。まさしく、ウッソー、です。
 イノシシ肉を著者は敬遠しています。というのも、豚熱ウィルスが流行したため、その免疫をもたせるため、ワクチン入りの餌(エサ)を野外散布しているため、ワクチンをとったイノシシばかりなので、食べる気がしないそうです。知りませんでしたよね、こんな事情があるなんて...。
 クマの肉は山菜と非常にあう。秋クマは冬眠前に栄養をたくわえるので、赤身より脂のほうが多くなるが、この脂はどんなに食べても胸やけがしない。脂ののったクマ肉は本当に甘くて、日本酒にも白飯にもよく合う。筋肉質のクマ肉はとくに歯ごたえが強いので、なるべく小さく薄切りにする。
 クマ肉は高級品。100グラムで1000円以上もする。そのかわり10日間連続して食べても飽きない味。クマ肉のもっとも美味しい食べ方は、すき焼き。牛肉より極上。
 シカ肉は、たまらない甘みがある。そのためには、じっくり低温調理する。
 猟師はキツネやタヌキは食べない。食べると祟られるから。
 ジビエ肉は、かめばかむほど、甘みがギューとしみ出てくる。
猟師として狩って、解体して、調理して、販売する。そして、ジビエの肉も皮もムダなく利用させてもらう。
 山の中に入って長く待機させられるわけです。すごい辛抱ですよね。私にはとても出来そうもありません。でも牛肉より極上というクマ肉のすき焼きは一度ぜひ味わってみたいと思いました。
(2022年11月刊。税込1870円)

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