弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年12月12日

小さな里山をつくる

生物・チョウ


(霧山昴)
著者 今森 光彦 、 出版 アリス館

 この春、私の庭の一隅にフジバカマを5株だけ植えつけました。夏の日照りと強風のせいで、うち1株は枯れてしまいましたが、残り4株はすくすくと育ってたくさんの小さな花をさかせました。白っぽい小花とチョコレート色の小花がぎっしり咲いたのでした。
 ところが、残念なことにアサギマダラは来てくれませんでした。それでも、少し離れたところに住む知人が、もう何年も庭に来ていたアサギマダラが今年は来なかったと嘆いていました。そこは、そんなに広い庭ではありませんから、うちにだってアサギマダラは来てくれるはずだと大いに期待しています。今年は早々にフジバカマをネットで注文して取り寄せました。一気に、とはいきませんが、幅1メートル、10メートルの長さのフジバカマ畑をつくってアサギマダラを招くつもりなのですが...。
 著者は、なんと75種類ものチョウのすむ(やってくる)庭というか、里山をつくっています。絵本のような、写真集のような本書に、もちろんアサギマダラもうつっています。少し紹介します。
 秋には、旅人のお客さんがやって来る。著者のつくったチョウの庭にすみついているのではなく、成虫だけが訪れる。アサギマダラだ。暖かくなると北上し、涼しくなると暖かい地方に南下する、旅をするチョウだ。毎年やってくるが、滞在するのは、ほんの数日間だけ。根っから旅好きのチョウなのだ。
 いやあ、驚きますよね。このアサギマダラは、台湾から長野県までを行ったり来たりしているというのです。
 アサギマダラの羽にはリンプンがないので、羽に油彩ペンでナンバリングできるのです。その記号によって、いつ、どこにいたというのを後づけで知ることができます。とても気の長い根気のいる作業です。それでも全国にそんな人たちの観察努力によって、アサギマダラの飛翔行為の全容が判明したのですから、たいしたものです。
 著者はチョウたちを呼ぶ庭づくりをはじめました。すごいです。木を植え、花を植えていきます。
 チョウにも好みがあります。たとえば、アゲハチョウはボタンクサギの常連客です。このボタンクサギは、わが家の庭にも自生していますが、自生能力が高いのはいいとして、ともかく臭いのです。なので、私は、見つけ次第にひっこぬいています。ところが、クロアゲハの大好物のようです。ちっとも知りませんでした。
 それにしても、たくさんのチョウの名前をよく知っていること、その特性・好みを生かした庭(里山)づくりをするなんて、すごいことです。秋から冬にかけて、枝打ちもしますし、大きな木も伐採することもあります。そんなときにはチェーンソーを使うのです。慣れてないと恐い作業です。
 久しぶりに手にとって見直しました。楽しい、大判の写真集です。
(2021年5月刊。税込2640円)

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