弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年11月22日

自民党の統一教会汚染

社会


(霧山昴)
著者 鈴木 エイト 、 出版 小学館

 読めば読むほど腹の立ってくる本です。もう、ホント、つくづく嫌になります。これが日本の政権党の実体かと思うと、恥ずかしいやら、悲しいやら、いえ、はっきり言って、吐き気をもよおします。衆院議長の細田博之は依然としてダンマリを決めこんでいますよね。萩生田光一・政調会長も同じです。逃げきりを許してはいけません。ひどすぎます。
 統一協会(この本は「教会」としていますが、協会が正しいのです)の教義は、日本人について、「人間的に考えれば、許すことのできない民族」と決めつけ、原爆投下も引きあいに出して悔い改めを迫っているのです。
 文鮮明(元教主。故人)は、儀式のなかで日本の天皇を自分の前でひざまづかせました。その妻であり、絶対君主のように君臨している韓鶴子現総裁は、安倍元首相について、自分たちに侍(はべ)るべき存在とみて、「教えてあげ、教育しなければならない」としていました。
 安倍元首相や桜井よしこなどは「美しい国・ニッポン」などと声高に叫んできた(いる)わけですが、日本は韓国に隷従すべき存在であるから、贖罪(しょくざい)するのは当然のこと、莫大な献金をしても、まだ足りないという統一協会の教義とはまったく相反するはずですが、お金と票、そして「反共」の点で醜い手を結んだのです。
 この本は、自民党議員が、いかに統一協会と手を結んでいるのかについて、突撃取材も繰り返しつつ明らかにしています。大変貴重な労作です。発表以来の3週間で4刷というのも当然ですし、もっともっと読まれるべき本です。
 たとえば、自民党の北村経夫参議院議員は統一協会の組織票8万票を上乗せして当選したこと、その裏では、アベやスガが画策したことが明らかにされています。
 統一協会が日本の政治家へ働きかけ、抱き込みを図っている目標は、真(まこと)の父母様(文鮮明と韓鶴子)の主権によって日本という国を自由に動かすこと。人類の使命は、真の父母様の民となること、というのです。実に恐ろしい教義です。
 菅元首相は、首相官邸に統一協会の幹部たちを招待していました。これまた、とんでもないことです。
 そして、安倍内閣のとき、統一協会と関係の深い議員たちが次々に内閣や自民党の要職に抜擢(ばってき)されたのです。これまた驚くべき事実です。これは、今の岸田政権でも同じことです。その典型が萩生田政調会長でしょう。
 統一協会は日本は過去に間違ったことをした、とんでもない民族なので、自分をかえりみることなく(すべてを捨ててでも)、全てを惜しみなく(韓国の人々に)与えなければならないと教えています。もちろん、受けとるのは韓国の民衆ではなく、文鮮明・韓鶴子とそのファミリーです。その利権をめぐって、文鮮明の死後に、母親と息子たちとのあいだで醜い争いがあり、アメリカでは裁判にまでなったのでした。なにしろ、日本から韓国に送金された金額は毎年300億円以上(何十年と続いています)なのです。
 体当たり取材も重ねて自民党と統一協会との深い関係、その闇を明らかにしている大変貴重な労作です。300頁ほどの本ですが、怒りをおさえながら、1時間あまりで読みあげました。
(2022年10月刊。税込1760円)

 博多駅で映画「ザリガニの鳴くところ」をみてきました。原作はアメリカで2019年、2020年に一番売れた小説です。全世界で1500万部突破したというのですから、すごいものです。
 私は昨年読んで、まさしく圧倒されました。なので、もちろんこのコーナーでも紹介しましたし、本好きの人に勧め、感謝されました。
 ともかく自然描写がすごいのです。森の中、沼地で生活する、しかも家族がどんどんいなくなり、少女が一人で生きていくのです。
 ところが、世の中には蔑視するだけではなく、親切な人もいて、やがて学校に行かなくても読み書きが出来るようになり、ついには恋人までもつくれました。しかし、それが裏切られてしまい、ついに殺人の疑いで起訴される...。
 いやあ、原作ほどの感銘はありませんでしたが、すばらしい映像です。必見です。そして原作を読むことを絶対おすすめします。

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