弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2022年9月27日
氏名の誕生
日本史(江戸)
(霧山昴)
著者 尾脇 秀和 、 出版 ちくま新書
結婚しても姓を変えたくない人が少なくありません。それなら、江戸時代までの日本のように、つまり明治以降の日本の制度にこだわることなく、夫婦別姓を認めて何の不都合もありません。
自民党の保守派が夫婦別姓に対して頑強に抵抗してきましたが、実は、その根元は勝共連合=統一協会の教義にあることが判明しました。でも、韓国では、昔も今も夫婦は別姓なのです。典型的な「反日」団体の言いなりに動いてきた自民党の保守強硬派は統一協会糾弾の嵐のなか、ダンマリを決めこみ、ひらすら嵐の通り過ぎるのを待っているばかりのようです。おぞましくも、いじけない人々です。
江戸時代、名前が変わるのはフツーのことで、一生同じ「名前」を名乗る男は、むしろいない。江戸時代の名前は、幼名を除いて、「親が名づけるもの」ではない。改名が適宜おこなわれ、「かけがえのないもの」でもない。現代日本の常識は江戸時代には、まったく通用しない。
江戸時代の人名には、生まれた順番とはまったく無関係なほうが、圧倒的に多い。甚五郎、友次郎といっても、どちらも長男でありうる。五男でも二男でもないのがフツー。
幼名や成人名に、父祖の名を襲用することが多い。「金四郎」を父と同じく子どもが名乗るとき、四男ではない。「団十郎」も「菊五郎」も十男や五男であることは求められていない。
江戸時代の人間は、幼名、成人名、当主名、隠居名の四種類の改名を経るのが一般的。幼名は親などが名づけるが、成人(15歳か16歳が多い)になると、自ら名を改める。このほか、一般通称としての名前に法体名(ほったいな)がある。僧侶や医者、隠居の名前。宗春、旭真、良海、洪庵など。江戸時代の医者は法律で法体であるのが通例で、長庵(ちょうあん)、宗竹、玄昌などと名乗った。
江戸時代の大名の「武鑑」に「松平大隅守斉興」、「大井大炊頭利位」、「青山下野守忠裕」とあるとき、最後の「斉興」、「利位」、「忠裕」を「名乗(なのり)」と呼ぶ。この「名乗」は「名前」としては日常世界では使わない。江戸時代の書判には、「名乗」の帰納字を崩したものを用いる習慣が広がっていた。書判はもともとは草書体で本人が自書したものを言ったが、江戸時代中期以降は、印判(ハンコ)を用いることが広がった。江戸時代は印形を重視し、そして多用した時代である。この印を捺す行為によって、初めて、その文書に効力が発生する。たとえ自署であっても、無印であれば、それは後日に何の効力ももたない。ちなみに、江戸時代は朱は用いず、もっぱら黒印である。苗字や通称を印文にはまず使用しない。印文は多くが篆書(てんしょ)であり、判読が困難。他者に読ませることはほぼ意識されていない。
苗字は武士から一般庶民まで持っている。ふだんは通称だけを名前とし、自らはこれに苗字をつけたものを「名前」としては常用しない。すなわち、一般庶民にも代々の苗字がないわけではない。それは名乗や本姓と同じように、設定があっても使わないものだった。
よく、江戸時代まで一般庶民には名前(姓)がなかったので、明治時代になって戸籍制度ができて登録しなくてはいけなくなったので、あわてて、まにあわせの名前を考え出して届け出たと言われますが、これはまったくの間違いだということです。「姓」はあったけれど、自ら名乗るものではなかったのです。
一般の百姓にとって、苗字(姓)は自ら名乗るものではなく、他人から呼ばれるものとして用いられた。
「姓名」、とくに「名」を呼ぶのを遠慮するのを「実名忌避」と呼ぶ。
江戸時代の著名な豪商である鹿島屋久右衛門は「廣岡」、湖池屋善右衛門は「山中」という苗字を持っていた。屋号と苗字は別のもの。苗字は血縁者間で共有するが、屋号は血縁者間では必ずしも共有しない。
ところが、江戸時代でも朝廷社会では、一般の常識とは異なる常識が通用していた。二つの常識が並行して存在していたのだ。
江戸時代の庶民にとって、苗字は自らの人名を構成する必須要素ではない。それは、いちいち使用するものではなく、古くから代々の苗字を設定しているのもフツーだった。
苗字公称許可は特別な価値をもっていた。明治3年9月、苗字公称が自由化された。それが、突然、自由化されてしまった。
では、なぜ、政府がそうしたのか。「国家」にとっての「氏名」とは、「国民」管理のための道具だった。つまり、「国民」に徴兵の義務を課す道具だった。徴兵制度を厳格に実行するため、国民一人ひとりの「氏名」の管理・把握を徹底する必要があった。
要するに、徴兵事務という政府側の都合だった。そして、そのため、氏名は一生涯、最初の名前は変えないものだという新しい「常識」が誕生し、今日に至っている。
氏名についての「常識」の変遷がよく分かりました。
(2021年5月刊。税込1034円)
祝日、サツマイモを掘りあげました。地上部分は縦横無尽に葉と茎がはびこっていますので(これがかえって悪いかなと心配しました)、地下のイモはどうだろうかと思ってスコップを入れてみると、出てきたのは、なんと細いものばかり...。昨年と同じ状況で、小粒のイモばかりでした。植えつけを研究してみます。
日曜日に、アルミホイールにくるんで1時間、オーブンで焼いて食べてみました。黄色い果肉は、ねっとりとまあまあ美味しく食べられました。ほくほく型ではありません。家人からは甘味が足りないから売り物にはならないと不評でした。
玄関脇の青い朝顔は終わりました。ピンクのフヨウが咲いています。
そろそろチューリップを植える季節です。サツマイモのツルや葉を穴を掘って埋め込みました。畳一枚分の作業は大変です。リコリスの花の第2波が咲いてくれました。
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