弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年8月14日

江戸の道具図鑑

江戸


(霧山昴)
著者 飯田 泰子 、 出版 芙蓉書房出版

 江戸時代の人々がどんな生活をしていたのかが、ビジュアル(視覚的)に分かる図鑑です。なので楽しく眺めることができました。
 たとえば、江戸時代の歴代天皇はすべて土葬された。これは、昭和天皇まで続いた。
 庶民の棺は桶型の座棺。依頼されて素早く作るので、早桶ともいった。
 子ども時代の遊びは、時代で変わるけれど、春のタコ揚げと、四季のコマ廻しは相当の努力が必要になっている。子どもの遊びとして「タコ揚げ」があるが、京阪では「いかのぼり」と称し、単に「いか」と呼ばれることもあった。全国的には「いか」が優勢だった。
 銭湯では洗髪を禁止するところも多かった。大量の湯を使うことになるためで、洗髪を禁止させる銭湯が多かった。洗髪するのは、せいぜい月に1回くらい。江戸時代には、かなりの高家でも内風呂がないのはフツーだった。洗髪のための市販の洗剤はなく、なんと自作していた。
江戸時代、女性はみな、結婚すると歯を黒く染めた。
箪笥(箪笥)は、一般庶民には無縁だった。部屋に箪笥はなく、行李(こうり)に入れるか、風呂敷に包んで、部屋においていた。
 畳は、古くは座るところだけに敷く敷物だった。室町時代のあと、部屋全体に敷きつめるようになった。
 囲碁の歴史は古く、平安時代に始まる。下々に流行しはじめたのは、江戸後期。碁会所ができ、人々は町の碁会所に通った。女人禁制の銭湯の2階は、やりたい放題で、そこで碁をうつ人々もいた。
 江戸時代、識字率はかなり高かった。それは高家に奉公するにしても、職人になるにしても、読み書きは大切だったから。侍の子弟はもちろん、町人の子も寺子屋で学んだ。
 紙は貴重品だったので、書き損じても捨てずにとっておき、紙屑屋に買いとってもらい、これを専門の漉返(すきかえ)し屋が再生する。このようにして再利用されるのがフツーだった。江戸時代の風俗について、大変勉強になりました。
(2022年5月刊。税込2750円)

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