弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年8月12日

グーグル秘録

アメリカ


(霧山昴)
著者 ケン・オーレッタ 、 出版 文春文庫

 世界はグーグル化された。私たちは情報を検索するのではなく、「ググる」。
 アメリカで電話の普及率が50%をこえるのに71年かかった。電気は52年、テレビは30年かかった。ところが、インターネットはわずか10年で普及率が50%をこえた。DVDは7年、FBは5年で2億人のユーザーを擁した。
 グーグルは絶対権力になった。アメリカのネット検索の3分の2、世界全体の70%を占める。グーグルは、230億ドルの規模をもつアメリカのネット広告市場と540億ドルの規模をもつ世界のネット広告市場で各40%のシェアを占める。
 社員には食事またはスナックが無料で提供されている。5か月間の育児休暇中の給料は全額支給される。社員は、勤務時間の20%を好きなことにあててよいという「20%ルール」がある。
 グーグルは、平等主義であると同時に、エリート主義を貫く。創業者2人とCEOのシュミットは、既に10億ドルの資産をもつビリオネア。ほかの役員は45万ドルのほか、その150%のボーナスを受けとった。
 ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンの父親は、ともに大学教授で母親も科学関係の仕事をしていた。ともに1973年の生まれで何事にかけても、とことん議論を尽くすような家庭で育った。子どもの自発性を重んじ、画一的な授業をしないモンテッソーリ式の小学校に通い、好きなことを自由に学ぶことを許された。
ブリンは、友骨精神が強く、ユダヤ人としての教育を受けたものの、礼拝には顔を出さなかった。ブリンは、高校でも大学でも、ほとんど勉強せずに、すべての試験に合格した。
 ペイジの父親はコンピュータサイエンスの教授で無宗教、母親はユダヤ教信者だった。
 ブリンとペイジが出会う2年前の1993年の時点では世界50ヶ国でインターネットを使っていたのは1500万人でしかなかった。
 スタートした時点のグーグルは徹底して検索にこだわった。2000年、グーグルの1日あたりの検索処理件数が平均700万件に達した。すぐに1日の検索処理件数は1億件になった。
グーグルは世界中に数十か所のデータセンターを置いている。物理的にデータセンターを世界中に分散すれば、データ処理の効率は大幅に高まる。
グーグルは広告がクリックされた回数しか広告料を受けとらない。ユーザーが広告のその他の情報をどれだけ眺めているか、何をクリックするか、何を検索するか、何が好きで何は嫌いかといった情報は、広告主にとって測りしれない価値がある。
 グーグルはそうした情報を、直接、広告主に渡すことはしない。だが、それを使って、特定の顧客にターゲットを絞って広告を表示するのを手助けしているのは確かだ。グーグルの顧客は広告主なのか、それともユーザーなのか・・・。
 今日のグーグルは難攻不落に思える。しかし、本当に盤石とみてよい根拠は何もない。かつてのトップ企業IBMもマイクロソフトも凋落してしまった。
いやぁ考えさせられる文庫本でした。私たちの個人情報がどこかで集積され、売られ。利用され、狙われているのですよね・・・。本当に怖い世の中です。

(2013年9月刊。税込1232円)

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