弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年8月10日

無人戦の世紀

アメリカ


(霧山昴)
著者 セス・J・フランツマン 、 出版 原書房

今や、世の中、ドローン万歳の時代になっています。たしかに観光地を上空から、居ながらにして眺めることができるなんて、うれしい限りです。マチュピチュ遺跡のような遠いところだけでなく、身近な所員の新居まで上空から眺められるのですね...。
でも、上空にいるドローンが、私たちの毎日の私生活を観察・監視し、さらには上空から小型ミサイルを撃ち込まれてしまったら、もう逃げようがありません。それは、もう、本当に怖いことです。
2020年までに使用された軍用ドローンは2万機をこえた。
ドローンは、ビジネス規模も大きい。2019~2029年の10年間に軍用ドローンに投じられる金額は960億ドルにのぼるとみられている。いやあ、とてつもない金額です。想像を絶します。
2020年に、アメリカは前から暗殺しようと狙っていたイランのカセム・ソレイマン司令官をドローン攻撃で暗殺することに成功した。
アメリカ政府が気にくわないと思ったら、外国で、空港から出てきたばかりの人物をドローンからミサイル攻撃して暗殺できるって、ホント、恐ろしいことですよね。
ソレイマン司令官の命を奪ったミサイルを発射したのは、重さ2200キロ、翼幅20メートルのドローンだった。つまり、小型のドローンではなかったのです。
この本によると、ドローンのパイロット(操縦者)のなかには、任務と日常生活との不協和音に苦しんでPTSDを発症したものが少なくないとのこと。ドローン・パイロットは、夜になれば帰宅してフツーの市民生活を送る。そのギャップのせいで、神経に混乱をきたす。しかも、それを避けるすべはない。カメラの性能が向上していけば、攻撃のボタンを押したあとで見る悲惨な映像は、いっそう生々しいものとなる。そうなんですよね。彼らが見ている映像は、市民向けにもつながっていると言えますね...。
ドローンそれ自体が責任を問われることはない。ドローンは、世界中で、大規模な秘密作戦のもとで、ときに標的殺害を目的として使用されている。そこに戦略はなく、ただ殺すのみ。今や、ドローンはテロリスト集団も手にしていて、改良を続けている。まずは既製のドローンを購入するところから始める。超小型ドローンでも25分間は飛行可能だ。中国は、ドローンの発展とともに勢いを増した。いやあ、ドローンって、ほんと怖いですよね。改めて実感しました。ドローンが戦場で活用されている状況を知ることのできる本です。

(2022年3月刊。2800円+税)

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