弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年7月13日

学問と政治

社会


(霧山昴)
著者 芦名 貞通、・・・松宮 孝明 、 出版 岩波新書

日本学術会議の任命拒否問題は今なお未解決であること、その問題点を任命拒否された6人の学者が問いかけている本です。
杉田和博という警察官僚出身の内閣官房副長官が「外すべき者」としたことが政府の文書で明らかになっています。一体なぜ警察トップだった一官僚が学術会議の任命に介入できるのか、まるで私には理解できません。最近の自民・公明政権の恣意的行政運営、学術軽視はひどすぎます。コロナ禍対策は、その典型でした。PCR検査をきちんとせず、大阪を典型として保健所を削減するなど、市民の生命と生活を脅かすばかりです。
マスコミもNHKをはじめとして政府の言いなりで、問題点をえぐり出さずに「大本営発表」ばりの報道に終始しています。そして、政府に批判的なことを少しでも言うと「反日」というレッテルをはってネット上で攻撃する人がいます。それは、自分こそ日本であり、自分と違う考えの人はすべて「反日」だと決めつけるに等しい。いやあ、怖い世の中ですね...。
政府が自分に都合のよい人を審議会の委員として選ぶのは「当たり前」という「常識」は改める必要がある。まことにもっともです。福岡の裁判所にも、審議会がいくつかありますが、とんでもない委員が当局によって選ばれているのに何回もぶつかりました。当局に忖度する意見しか言わないのです。たまには自分の頭で考えてみたら...、と思いました。2人とも大学教授でした。こんな教授の下で学ばされる学生は気の毒だと思ったことです。
同じことが、法制審議会でも起きているようです。法務省から期待される学者ばかりが選ばれているというのです。学者という看板が泣きますよね。でも、そんな本人は「こりくつ」つまり「へりくつ」を弄するのに長(た)けていますし、「メシの種」とばかりに割り切っているようで、いかに批判されようと何の病痒も感じないようです。情けない現実です。
何を学問するかは現場にまかせるべき。今すぐ何かに役立つもの、という観点も捨てさるべき。
本当に私はそう思います。自由な発想、とらわれない発想、権力にあらがう発想、これこそが社会をいい方向に動かしていく発展させる原動力だと思います。みんなが同じことを言っている社会には未来がないのです。みんな違って、みんないい。これこそ、社会が平和で、発展していく基礎なのだと私は確信しています。
岸田首相は、本当に聞く耳をもっているというのなら、任命拒否はすぐに撤回すべきです。
(2022年5月刊。税込924円)

 先日うけたフランス語検定試験(1級)の結果が送られてきました。もちろん、不合格なのですが、64点でした(150点満点)。自己採点では61点、これは4割ということです。合格点は94点ですので、30点も不足しています。この道ははるかに遠く、険しい。まさしく実感します。それでも、めげず、くじけず、ボケ防止のためにも、毎朝、NHKフランス語の書き取りを続けます。

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