弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年7月 7日

住宅営業マン・ぺこぺこ日記

社会


(霧山昴)
著者 屋敷 康蔵 、 出版 三五館シンシャ

住宅営業マン...、あまたある営業職のなかでも群を抜いたハードワーク。きわめて高い離職率を誇っている。一生に一度の高い買い物として、数千万円のお金が動く現場はきれいごとの通じない世界。会社から、「目標」という名のノルマを課され、お客からは過剰な要求、ときに不当なクレームをつけられる。
タマ「ゴ」ホームの固定給は「生かさず殺さず」ほどの金額、つまり、22万円。これに成果を出して歩合給がプラスされて、ようやく生活が成り立つ仕組み。うまくいけば年収1000万円以上も夢ではない。歩合給は、契約金額の1.2%を着工時、上棟時、完工時に3部割で支給される。
イベントの景品だけをもらいにくる「客」がいる。ところが、本気で住宅購入を考えている客ほど、景品をもらいたがらない。その逆に、景品目当ては客にならない人ばかり。
タマ「ゴ」ホームにはノルマはなく目標があるだけ。しかし、いつのまにか「目標」は「ノルマ」にすり替わっている。3ヶ月以上も契約がとれない営業マンは「接客停止」処分となる。 そして、精神的に追いつめて、自主退職の流れをつくる。
また、成績の悪い営業マンの罰ゲームとして、飛び込み営業させられる。成績が悪いと、こうなるよ、という見せしめに使われるのだ。
住宅メーカーによって、金額・坪単価にはかなりの開き(差)がある。これは、広告その他の諸経費・人件費をどれだけかけているかの差でもある。
規格設計と自由設計...。規格住宅は、間取りや外観の自由度がないだけでなく、設備のグレードも落ちて、見劣りしてしまう。
住宅営業マンは、客のもっている「お金のニオイ」に敏感だ。でも、その判断を見誤ることがある。そして、来た人のなかで、誰が決定権をもっているのかを探るのが肝心。本当にお金をもっている人は、逆にもっているフリをしない。
今日、家を買おうとは思っていない人に、今日、家を買わせるのが住宅営業マンの仕事だ。タイミングを逃がすと、客の住宅購買意欲は下がってしまう。
きのう初めて展示場に来た客に、今日、契約の確約をもらい、明日、契約する。所要3日で押し込む。これが、スーパー短期間クロージング。
住宅営業マンは、お客の前で理想の人間を演じ続ける、「一流の詐欺師」でなければならない。多くの人が、家という名の「夢」を買いに来る。
タマ「ゴ」ホームでは、頻繁に入社して退職するため、そもそも新入社員が長く働き続けることを期待していない。
タマ「ゴ」ホームでは、毎朝の朝礼で、まず額縁に入った社長の写真に向かって「おはようございます!」と挨拶する。これって、いかにも軍隊調ですよね、ひどく違和感があります...。
私の依頼者に、何人も住宅営業マンがいました。少しは、その苦労話を聞かされていましたので、話として、良く理解できました。それにしても大変な仕事ですよね...。いつまで、こんなハードな仕事をやれるものでしょうか...。でも、社会的には必要な仕事なんですよね。
(2022年6月刊。税込1430円)

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