弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年6月26日

変形菌

生物


(霧山昴)
著者 増井 真那 、 出版 集英社

手にとって、じっくり眺める価値のある写真集です。撮ったのは弱冠20歳の世界的変形菌研究者。なにしろ5歳のときに変形菌に出会い、それ以来15年、変形菌を研究し続けて、今や第一人者になったというのです。「三つ子の魂...」と言いますが、5歳からの15年間で、これだけ究めることができたのですから、人間の能力の素晴らしさも実感させられます。
前に、このコーナーでも紹介した『世界は変形菌でいっぱいだ』(朝日出版社)に続く2冊目。現在、20歳の著者は慶應義塾大学先端生命科学研究室に所属して研究を続けているとのこと。ぜひ、続けてください。応援しています。
変形菌は、その変わった見かけや生態のため、過去には動物の仲間とされたり、植物の仲間とされていた。20世紀後半まで、「菌類」とみられていた。今日では、いずれとも異なるグループ(アメーボゾア)に属していると考えられている。
変形菌の変形体は、巨大な単細胞生物。大きさ数ミリから1メートルをこえていても、たったひとつの細胞から成る。
2個以上の個体がくっついて、1個体になって生きていくこともできる。ただし、その融合相手は誰でもいいわけではなく、同種といえとも、変形体どうしがくっつくのは、本当に稀なこと。2個体の「自分」どうしなら、再びくっついてしまう。ただし、それには数時間もかかることがあった。この非接触による判断がなされたとき、変形体は自ら透明な粘液を発信していた。
変形体は、落ち葉たまり、腐った倒木や切株で暮らしていることが多い。
乾燥や低温にあうと、変形体は「菌核」と言われ、休眠状態に移行する。
高温・低温に耐え、飲まず食わずのまま何年間も無事に生きている。
あまりにも変わった生命体ですが、よく撮れた写真を眺めていると、この世の不思議を実感させられます。
(2021年12月刊。税込2200円)

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