弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年6月25日

平安京の下級官人

日本史(平安)


(霧山昴)
著者 倉本 一宏 、 出版 講談社現代新書

古文書を読むと、平安時代の庶民がどのように生きていたのか、分かってくるのですね。古文書を読みといてくれる学者の力は偉大です。
平安時代、とくに藤原道長の時代には、いろんな愁訴(しゅうそ)が、官人や学生(がくしょう)、また郡司や百姓(ひゃくせい)から朝廷に寄せられた。
国司苛政(かせい)上訴を受けて、国司が罷免されることも多かった。
下人(げにん)と呼ばれた下級官人が起こした愁訴は、道長において愁訴を出した人間に止めさせ、同時に、問題となった蔵人(くろうど)の行為はよろしくないと判断した。
国司苛政上訴がなされ、藤原道長は問題を起こした人間を勘当したが、同時に、問題とした人間も検非遣使によって拘禁された。
「うわなり打(うち)」とは、離縁された前妻が、後妻(うわなり)に嫌がらせをする習俗。前妻が憤慨して、親しい女子を語らって後妻を襲撃し、後妻のほうでも親しい女子を集めて防戦につとめた。
『枕草子』で有名な清少納言の兄である清原致信(むねのぶ)もあわせて殺害された。
藤原道長邸から5月に金2千両が盗まれ、7月に犯人が逮捕された。犯人は貴族の従者たちであり、盗まれた金は戻っている。このとき、貴族社会全体の財産だから、その割りあて以上に献金した人もいた。
平安時代を裏からのぞいている気分のする新書でした。
(2020年1月刊。税込1034円)

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