弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年6月17日

失敗から学ぶ登山術

人間


(霧山昴)
著者 大武 仁 、 出版 ヤマケイ新書

私はいわゆる登山とは無縁ですが、年に何回か近くの小山(388メートル)に登ります。自宅を出て1時間半ほどで、見晴らしのいい頂上に着いて、そこでお弁当開きをし、しばしまどろんだりします。上空に鳥が飛び、小鳥がさえずり、蝶が花畑をゆらゆらと飛びまわり、遠くに見える下界で人がせわしなく行きかうのを眺めます。至福のひとときです。
それなりに急峻な斜面を登るのですが、以前のように一気に登ることはできなくなり、何回も小休止します。まあ、それでも、自分の足で登れるだけ、まだ良しとしています。まさしく年齢(とし)を実感させてくれるのが、山登りです。
若いころに日本アルプスの険しいロングコースを難なく縦走したことがあったとしても、それは何十年も前のこと。自分の現在の体力度・技術度をきちんと認識し、そのレベルにあった山選びを計画を立てることが安全につながる。
自分が備える技術力や体力を上回るグレードの登山コースを歩くと、滑落や転倒などのアクシデントにつながりやすい。
登山用具の使い方は、山行前にマスターし、用具に慣れておきたい。
私は、以前、久しぶりに山登りをしたとき、はいている登山靴の底が経年劣化ではがれてしまったことがあります。それからは、もったいないなどと思わずに、何年かおきに買い換えるようにしています。水泳のゴーグルも同じです。用具の経年劣化は人間の身体と同じように確実にやってくるのです。
今はスマホのGPSを利用するのは常識のようですが、スマホのバッテリーが切れてしまったらアウト、そんなことにならないように予備のバッテリーを準備しておく必要もあります。
登山中にエネルギー不足にならないよう、山行前日の食事では、エネルギー源となる糖質を多くふくんだご飯やパン、麺類などの主食をしっかり食べておくように注意されています。私も、ふだんはダイエットのため、糖質制限していますが、山の頂上では、昔ながらの酸っぱい梅干し入りのおにぎりを軽く2個食べます。
登りに1時間半、帰りに同じだけかけて午後3時すぎ、疲労困憊して自宅にたどり着き、さっとシャワーを浴びて、さっぱりします。
大自然の恵みをたっぷり堪能できるのが田舎の良さです。
道に迷ったら、沢にそって下ってはいけない。道を見失ったら、見通しのよい高みや屋根に上がるのが原則。沢へは下らない。高みに登り返す。これが登山道を見失ったときの原則。これを知っただけでも、990円の本書を読んだ甲斐があるというものです。
(2021年11月刊。税込990円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー