弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2022年2月14日
毛
生物
(霧山昴)
著者 稲葉 一男 、 出版 光文社新書
細胞にも毛がある、と言われると不思議な気がします。ええっ、あんな小さな細胞に毛なんてあるわけないでしょ、つい、そう思ってしまいます。でも、あるんです。
その一つが精子。精子が活発に動きまわるために必要なのが、「細胞の毛」。鞭毛(べんもう)とか繊毛(せんもう)と呼ばれているそうです。
そして、ヒトの気管にある細胞の毛。空気中の細菌やウィルスが体の中に入ってきたとき、それを追い出そうとして、気管でさかんに動いている繊毛がそれ。
この細胞の毛を動かすには水分が必要。細胞の毛は十分な水の中にいるときこそ最大限に力を発揮するので、口の中が乾燥しないようにマスクをするなどして湿度を保つ必要がある。
ヒトの女性は一生のうちに卵子を500個つくる。男性の精子は20兆個。精子の毛は細胞膜が変形したもの。ヒトの精子の毛(鞭毛)は30から50マイクロメートル(ミクロン)。毛の太さは0.2から0.3マイクロメートル、つまり200ナノメートルから300ナノメートル。
この細胞の毛の中に、毛を動かすエンジン、つまりダイニンと呼ばれるタンパク質の分子モーターがずらりと並んで入っている。この大きさは10から20ナノメートル。こんな小さな分子がATP(アデノシン3リン酸)という物質を分解することで得られるエネルギーを用いて、鞭毛の中で力を発揮させている。
細胞の毛の中には、9本+(プラス)2本のパイプが通っている。ダイニンのついた9本のパイプは「タブレット微小管」で、筒状になっている。その内側にもう2本のパイプ「シングレット微小管」が通っている。この構造は「軸糸」と呼ばれ、微小管の本数から「9+2(きゅうプラスに)」と呼ばれている。
この鞭毛(繊毛)がすごいのは、まず自ら波打って動くこと、単細胞生物の繊毛とヒトの鞭毛の構造はほとんど同じであること、体の維持に大切なことによる。
鞭毛(繊毛)が遺伝的になくなってしまうと、精子では運動がおかしくなって受精できなくなる。また、気管では、バイ菌を外に出せなくなる。嗅覚、つまり匂いを感じるのは、鼻の奥、鼻腔の上部にある嗅上皮。
また、匂い物質は、嗅上皮の粘膜に溶けることにより、嗅細胞を経て匂いとして認識される。ヒトの周囲にはたくさんの臭い物質があるので、嗅細胞は、これらを高感度で識別できる。それが出来るのは、細胞の毛があるからこそ。
1分子のATPが分解されると、10のマイナス20乗ジュールあまりのエネルギーが放出される。
以上みてきたように、本書で扱っている毛は、細胞の毛であって、体表面にはえている毛ではありません。
なぜ猿やオランウータンなどは毛深いのに、ヒトだけ体表面がツルツルなのでしょうか。毛皮や服を着る前もツルツルだったら、冬の寒さには耐えられませんよね。ヒトは一度、水の中で生活していたので、体表面の毛をなくしたという仮説が提唱されました。私は面白いと思ったのですが、今は否定されているようです。まだまだ、この世は謎だらけですね。ぜひ、もっと深く知りたいです。
(2021年11月刊。税込1034円)
コロナ禍がおさまりませんね。福岡県南部で、このところ急増しています。保健所をなくしてしまったツケを払わされています。PCR検査体制も不十分ですし、自宅療養という美名での放置はひどすぎます。アベノマスクも半分も残っていて(倉庫代6億円)、それを希望者に配布(その費用が10億円)するというのに、安倍元首相はお詫びの一言もありません。
日曜日の午後、雨があがったので、庭に出て雑草を少し取りました。チューリップの芽が地上に出てきていますが、雑草に埋もれてかわいそうなのです。芽をとったらいけませんので、用心しながら雑草を抜いていきました。
ずいぶんと陽が長くなり、夕方6時まで庭仕事ができるようになりました。春は、もうすぐそばです。
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