弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年2月 6日

ツバメのせかい


(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房

鳥が恐竜の子孫だというのは、今ではよく知られていることです。つまり、恐竜は絶滅してしまったのではなく、その子孫は鳥として現在も存在しているのです。
そんな鳥は、恐竜の時代から元気よく鳴いていた。
ツバメのメスは、ヒナにとてもよく似た声を出すオスに惹きつけられる。
ウグイスのオスは、「ホーホケキョ」を、至近距離でメスにささやきかける。これは、ライバルのオスに邪魔されないため。
ツバメをふくむ多くの鳥類は紫外線が見える。これは、紫外線領域の光を感知する視細胞をもっているため。
ツバメのエサは、基本的に飛翔昆虫。芋虫の仲間も食べてはいるが、主食は飛翔昆虫。
ツバメは飛翔能力が高いので、親鳥が食べられることは少ないが、無防備な卵やヒナの時期には捕食が主な死因になっている。捕食者はカラスやヘビ。日本では、子育てを始めてから半数が巣立つ前に食べられている。
カラスが来たときとヘビがきたときでは、親鳥の出す警戒音はまったく違う。ヒナは、その声を聞き分け、巣箱の奥に隠れるか、それとも巣箱を飛び出すか、反応を考える。
ツバメは、98%のオスは、一夫一妻で繁殖している。オスも子育てに参加する。ヨーロッパンのツバメはメスだけが抱卵するが、日本ではオスも抱卵を手伝う。ただし、オスの抱卵は6%ほどで、残り94%はメスが抱卵する。
ツバメは1年に2回、3回と繁殖する。繁殖に失敗したツバメのペアは、配偶者を変えることがある。
ツバメの寿命は1年半ほど。ツバメのペアは、日本に帰ってきたとき、半数は離婚していて、別のカップルを組んでいる。一夫一妻といっても、メスの浮気によって、父親の違う子(婚外子)がまぎれ込んでいる。牛舎で繁殖しているヨーロッパのツバメは、ひんぱんに浮気をしている。浮気された見込みが高まると、オスは子育てをサボる。
うひゃあ、な、なんという人間的な反応でしょうか...。
メスは、夫より魅力的で子孫繁栄能力の高いオスを浮気相手に選んでいる。
ツバメの巣にいるヒナたちは、親が来たときのエサ乞いの強さと調節している。うむむ、そ、そんなことができるのですか...。
ツバメは、毎年、繁殖を終えたあと、ゆっくり時間をかけて全身の羽毛を換羽する。これによって、高い飛翔能力と美しい見た目を維持している。
オスがメスより早く繁殖地にやってきて、繁殖の準備を整える。ツバメ、モンシロチョウ、カブトムシ、カエルなども同じ。魅力的で経験豊富なオスが早く繁殖地にやって来る。
渡り鳥は、3割ほど体重を減らしつつ、不測の事態に備える。
ツバメなどの渡り鳥は、効率的に酸素を取り込んで運搬できるように赤血球が多くなっている。
ツバメの世界を、一歩踏み込んで知ることができました。ツバメに関心のある人に一読をおすすめします。
(2021年6月刊。税込1980円)

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