弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年1月15日

土偶を読む

日本史(古代)


(霧山昴)
著者 竹倉 史人 、 出版 晶文社

日本全国に何万点と出土している土偶について、著者は食用植物と貝類をかたどっているものという仮説を提唱し、本書でそれを裏付けています。なるほどね、そうだろうなと思いました。
縄文時代は1万4000年間も続いている。これは実に長い期間ですよね。
そして、縄文中期に土偶はデザインが多様化するだけでなく、大型化、立体化した。さらには出土点数が爆発的に増加した。そして、縄文時代晩期にピークを迎えると、弥生時代に入って、突如として衰退・消滅してしまった。
縄文時代中期に人口が増加した最大の要因は、食料となったトチノミのアク抜き技術が成立して炭水化物がとれるようになったことにある。
著者は、土偶は当時の縄文人が食べていた食物をかたどったフィギアであるという仮説に思い至った。
ハート形土偶が集中的に出土している会津地方は、日本有数のオニグルミの里だった。
合掌土偶と中空土偶を使用していた人は日常的にクリを資源として利用していた。
椎塚土偶はハマグリをかたどった土偶。
みみずく土偶は、イタボガキ(貝)をかたどったフィギア。
星形土偶の頭頂部はオオツタノハ(貝)の形状に近似している。そして星形土偶が出土した貝塚から、実際にオオツタノハ製貝輪が発見されている。
カモメライン土偶の顔はマムシの顔だった。ヘビのなかで、猫の目のように瞳孔が縦に細くなるのはマムシだけの特徴。
結髪(けっぱつ)土偶はイネをかたどった土偶。
刺突文土偶はヒエをかたどったフィギア。
遮光器土偶は、サトイモの精霊像であり、その紡錘形に膨らんだ四肢はサトイモをかたどっている。
著者は考古学者ではなく、あくまで人類学者です。なので、学会でどのように評価されているのか知りませんが、面白い提起で、説得力はあると思いました。その後、この本について、トンデモ本に近いもので、科学的な裏付けに乏しいと酷評されているのを知りました。
(2021年5月刊。税込1780円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー