弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年1月 7日

ダチョウはアホだが役に立つ

生物(鳥)


(霧山昴)
著者 塚本 康浩 、 出版 幻冬舎

ダチョウとつきあって24年。ダチョウ博士は、今や大学(京都府立大学)の学長。そんな著者による面白くて、ためになるダチョウの話です。いやあ、すごい鳥なんですね...。
ダチョウという鳥はびっくりするほどのアホ。重傷を負っても気にしないくらい鈍感(回復するのが早い)。自分の家族は一瞬で分からなくなる。どれだけ世話しても人間の顔は覚えられない。おまけに気が荒くて、原因不明でキレてしまう。ダチョウの行動には規則性がないという規則がある。
ところが、そんなダチョウが人間には大変役に立つ。ダチョウには並外れた免疫力があり、花粉症やアトピー、そしてインフルエンザからコロナまで、いろんな感染症から人を守ってくれる。
ダチョウの体重はメスが120キロ、オスは160キロ。身長は2メートル50センチ。大きいダチョウだと体重200キロ、身長3メートルにもなる。
走る速さは時速60キロ、しかも、30分間も走ることができる。
ダチョウは瞬発力と持久力を両方もっている。筋肉が特殊で、血液中のへもグラビンの量が多い。ダチョウは1.5メートルの高さの柵も飛びこえる。足のキック力はひと蹴り4トンの力。
ダチョウは草食だが、ときにヘビの死骸や昆虫も食べる。土を食べてミネラル類を補給している。もやしを4キロ食べても、出すウンチは、わずか200グラム。ほとんど消化吸収してしまう。
視力は良い。眼球の直径は5センチで、重さ60グラム。10キロ先まで見える。40メートル先のアリも識別する。ところが脳のほうは目玉よりも小さく、なんと40グラムしかない。シワはほとんどなく、ツルツル。なので、アホなのでしょう。自分の家族まで見分けられないというのですから、あきれてしまいます。
ダチョウの目ん玉、そして涙は甘い。ムコ多糖がとても多いから。
ダチョウの卵は、重さが1,5キロから2キロもあり、殻の厚さは3~4ミリ。硬くて頑丈。
健康なメスは、春から秋にかけての半年で100個は生む。
コロナ禍のもと、ダチョウ抗体製品の需要が増えて、9000万枚のマスクが売れ、今や700億円もの経済効果がある。ダチョウの卵から取り出す抗体は質が良い。卵1個から抗体が4グラムとれ、これで8万枚のマスクがつくれる。注射してわずか2週間で卵に抗体が出きる。
薄毛に悩む人の6割にこのダチョウの抗体は効果がある。私にも効くのでしょうか...。
ダチョウ抗体は、経口で服用しても、胃酸でやられることはなく、腸まで届く。
いま、日本で500羽、アメリカのアリゾナに3000羽のダチョウが飼われている。
今や大学の学長をしている著者が小学生のころ不登校児だったというのにも驚きました。学校に行かず、鳥の世話をし、解剖までしていたそうです。よほど心の広い両親だったのでしょう...。子ども時代は不登校で、まわりからアホと思われていた少年が、こんな立派な研究者になっているなんて、世の中は本当に不思議なことだらけですよね...。悩める人には必読の本ですよ。
(2021年7月刊。税込1540円)

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