弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年1月 1日

コンビニからアジアを覗(のぞ)く

社会


(霧山昴)
著者 佐藤 寛 ・ アジアコンビニ研究会 、 出版 日本評論社

日本には5万店をこえるコンビニがある。これは郵便局(2万5000局)の倍。
たしかに、町の至るところにコンビニがあります。不意にトイレに行きたくなったときにも、コンビニを見つけたらホッとします。でも、コンビニが閉店した跡を見ることも多いですよね。もちろん看板も何もかも残っていないので、どのコンビニチェーンかまでは分かりませんが、コンビニの栄枯盛衰も激しいと実感しています。ちなみにマクドナルドなどのファスト・フード店も全国に7000店近くあるそうです。
今、日本のコンビニはアジア各国に進出している。
日系コンビニには共通点がある。チェーンが異なっていても、レジカウンターの配置、商品の店内での位置が極度に標準化されていて、どの店でも似たような商品は似たような場所に並べられている。コンビニでは、チェーンをこえて「標準化」が徹底している。これは、消費者にとって、予測可能性の高さ、それは慣れ親しんだ空間という安心感を与える。
日系コンビニは、売り場面積100平方メートルほどの標準的な店舗で2800~3000品目を扱う。
日本型コンビニはSQC、良質な店員の接客態度(S)、商品の品質の高さ(Q)、店舗の清潔さ(C)を密接不可分のものとしている。
また、POS(販売時点情報管理)は、いつ、どのような商品が、どのような価格で、どれだけ売れたかを経営者が把握するためのシステム。このシステムを最大限に活用して、販売と発注を連携させ、フランチャイズの本部が個々の店舗を経営指導するのに役立てている。
日本では、たとえばセブンは、98%がFC(フランチャイズ)加盟店であり、直営店は2%のみ。そして、商品の製造・物流は既存のメーカーや卸売業者を利用した。また、米飯・調理パン・惣菜といった、日持ちのしない調理ずみ食品を「戦略的商品群」として重視している。これらは高い粗利益率をもたらしている。
インドネシアではセブンは2017年に116店舗を閉鎖したように苦戦している。インドネシアで日系コンビニがうまくいかなかった理由の一つが、ジャカルタの交通渋滞が激しすぎるから。
最近、力を入れているのはベトナム市場。
日系コンビニは、カンボジア、ラオス、ミャンマーには進出していない。
ベトナムにファミリーマートとミニストップが先行している。
ローソンは中国で2000年代に苦戦した。
ファミリーマートは2014年に韓国から撤退した。
タイでは、買い物に行くことを「パイ・セブン」と言うほどになっている。タイのセブンイレブンは1万店をこえている。タイのセブンイレブンは全店舗のうちの14%以上の1574店舗がガソリンスタンド併設型。タイのセブンイレブンは、屋台文化と共存している。
ちなみにセブンイレブンは全世界に6万8千店舗近い(2019年2月末)が、そのうち81%はアジアにある。
台湾では、身近な存在であるコンビニをいかして、「幸せを守るステーション」という社会政策がとられている(新北市)。これは、食事をとれない18歳以下の子どもを発見したら、コンビニで無料の食事が提供されるというシステム。新北市は、食事をとれない子どもを発見したら、必要なサポートを行う。コンビニが食事を提供するときの費用は新北市の負担ではなく、寄付によってまかなわれている。
これは、日本の「子ども食堂」のようなものです。いいですね...。
中国市場について、ファミリーマートは台湾企業のもつノウハウに依拠している。
中国のコンビニでは、中国人の口にある日本料理というのではなく、「ホンモノ」の日本の味を楽しみたいというニーズが強い。中国風にアレンジされた「ニセモノ」は敬遠されるようになった。
アジア各国における日系コンビニの実際と課題とが写真つきで紹介されている面白い本です。
(2021年6月刊。税込2640円)

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