弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年12月 5日

網内人

中国


(霧山昴)
著者 陳 浩基 、 出版 文芸春秋

インターネットの中にひそむ悪魔をあぶり出せ、というキャッチ・コピーがオビについています。
スマホも持たず、とんとネット社会に無縁の私には縁のなさそうではありますが...。私の名前、霧山昴の本名をネットで調べた人がいて、簡単に分かったそうです。いやはや...。でも、この本は、そんなレベルではありません。ネットで攻撃した人をつきとめるのは朝飯前(あさめしまえ)。なりすましをふくめて、ネット上で考えられる犯罪のすべてが手にとるように解説されていきます。
いやあ、これでは、本人以上に第三者が本人のことを知ることができるというわけです。
この本は今ホットなホンコンを舞台としています。もちろん、目下の激しい自由をめぐる闘争はまったく出てきません。「チョンキン・マンション」の世界とも無縁です。
地下鉄の痴漢犯罪のぬれぎぬ、学校での深刻ないじめ、...、まさしく、現代社会のかかえる問題点を、名探偵の明智小五郎よろしく解決していきます。それは、ネットを駆使する女性(『ドラゴン・タトゥーの女』のリスベット・サランデル)を連想させる展開です。
年に2度の、人間ドッグのとき、就寝時間を気にしながらも、結末を知りたくて、もどかしい思いでページをめくりました。それほど面白かった本だということです。
(2020年9月刊。税込2530円)

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