弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年11月 6日

ブックセラーズ・ダイアリー

イギリス・人間


(霧山昴)
著者 ショーン・バイセル 、 出版 白水社

スコットランド最大の古書店の1年が語られている本です。私が町に出て入る店と言えば喫茶店のほかは本屋くらいのものです。「百均」とかデパートを目的もなくブラブラと歩いてみてまわるなんてことは、絶対にしません。私にとって、そんなことは貴重な人生の時間のムダでしかありません。そんな時間があったら、一冊でも多くの本を読みたいです。
この本は、本を買いに行ったはずが、なんと本屋を買ってしまったという、いかにも変わり者の店主が、古書店にやってくる変わり者の多い客との対応が率直かつ淡々と紹介されます。
切手収集家というのは風変りで寡黙な魚のような人種で、あらゆる年代がいるが、性別は男だけ。へーん、そうなんですか、女性は切手収集に魅力を感じないのですか...。
初版本マニアは鼻もちならない。しかし、初版本マニアは、残念ながら絶滅危惧種になりつつある。
つい先頃まで、本を再版するには、スキャンするか文字を入力しなおす必要があったので、採算を考えると、数百とか数千のオーダーが欠かせなかった。ところが、今や、PODプリンターをつかうと、絶版の本であっても1冊を比較的低コストで印刷できる技術が開発された。そうすると、かつての希少書の価格は暴落してしまった。
一般的には、小説を買うのは今でも大半が女性で、男性はまずノンフィクションしか買わない。
ハウツーものとかビジネス書も、買うのは男性のほうが多いのではないでしょうか。
本屋というものは、お金を使わずに長い時間、粘っていられる数少ない場所のひとつだ。頭のおかしな人間が多く町をうろついているが、磁力に引(惹)かれるように本屋に集まってくる。
なるほど、ですね。なので、最近の本屋にはイスとテーブルまで置いているのですね...。客の回転はすごく悪くなって、採算性は低下する一方になるでしょうね。
古本屋で働くようになって驚いたことは、本物の読書家なんて、ほとんど存在しないということ。本物の読書家はほとんどいないが、自分からそう思い込んでいる連中はごまんといる。
本の万引き。本を盗むのは、時計を盗むのより論理上の罪がいくらか軽いと思う。うむむ、そうなんでしょうか...。
本屋というのは、多くの人にとって、過酷な寒さとか現代社会の急激なデジタル化とかいったものから逃げ込める、平和で静かな休憩所みたいな役割を果たしているのではないか。
ある人にとって良い本が、他の人にとっては駄作ということも多い。
男が小説を読まないとうのは当たらないが、男が嫌う系統のフィクションがあるのは事実だろう。平凡、善悪がはっきりしたものは女性のためだけにあり、男が読む(好む)のは、一目おける高尚な小説か、探偵小説のどちらかだ。
私自身は、ノンフィクションは好んで読みます。日本と世界の動きをみて、私の日頃の疑問を解消し、今後を私なりに予測したいのです。
古書店と巨大資本アマゾンとのたたかいもレポートされていて、こちらにも興味と関心がありました...。
(2021年8月刊。税込3300円)

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