弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2021年8月19日
テンプル騎士団全史
フランス
(霧山昴)
著者 ダン・ジョーンズ 、 出版 河出書房新社
神の教えと剣(つるぎ)に生きた男たち。巡礼者でありながら戦士。貧者でありながら銀行家。それがテンプル騎士。
テンプル騎士団は、11世紀から14世紀にかけて、中世ヨーロッパと聖地に存在していた多くの修道会の一つ。知名度の高さは群を抜いていて、どの修道会よりも物議をかもした。
テンプル騎士団の設立は1119年。当初こそ貧しかったものの、やがて国王や教皇らと親しい関係を築いた。戦費調達を助け、国王の身柄解放のためのお金を貸し付け、王国政府の財務管理を請け負い、徴税し、城塞を建設し、町を治め、軍隊を訓練し、貿易摩擦に介入し、ほかの騎士修道会と暗闘をくり広げ、政治的な抹殺もいとわず、特定の者を王位につける手助けもした。当初こそ貧しかったものの、テンプル騎士団は、ついに強大な組織となり、中世後期まで存続した。
14世紀はじめ、突如、テンプル騎士団の総長以下が逮捕された。男色と異端の温床として迫害され、拷問を受け、見せしめの裁判にかけられ、自白させられ、集団で総長以下は火あぶりの刑に処せられた。そして、テンプル騎士団の全財産が没収された。
1307年10月から11月にかけて、フランス王フィリップ4世の命令によってジャックド・モレー総長以下、数百名のテンプル騎士団のメンバーが逮捕され、容赦ない拷問にかけられた。テンプル騎士団に入団するとき、背中やへそに口づけし、三度キリストを否認し、十字架に唾棄する。これを自白させられた。テンプル騎士団のメンバーは拷問に耐えられず、とりあえず自白し、教皇の赦しを得ようと考えた。
ところが、当初はフランス王の強引さを嫌っていた教皇も、自白による証拠をたっぷり見せつけられ、ついにテンプル騎士団を有罪と信じるようになり、フランス王の要求を受け入れても仕方ないと考えるようになった。こうやって、テンプル騎士団の逮捕されたメンバーは、1307年から3分の1が耐えられずに5年内に死亡した。
テンプル騎士団は無罪だという陳情が始まると、フィリップ4世は、急いで54人を火あぶりの刑に処した。すると、それを見て、恐怖のあまり、たちまち陳情団のメンバーは腰くだけになった。
人間は拷問に弱いものです。フィリップ4世はテンプル騎士団を亡きものにし、その全財産の没収を図った、つまり明らかな冤罪事件だったのです。
テンプル騎士団の残った全財産は聖ヨハネ騎士団に譲渡されたというのですが、フィリップ4世が損したはずはありません。テンプル騎士団を抹殺したフィリップ4世は同じ1314年、わずか46歳で亡くなり、フィリップ4世のに逆らえなかった教皇のクレメンス5世も病気で亡くなった。
テンプル騎士団は聖地回復を目ざす十字軍の戦闘のなかで目ざましい役割を果たした。テンプル騎士たちは、「人を殺すなかれ」ではなく、キリスト教の敵を殺すこと(殺人)が認められていた。
博愛主義をモットーとしているはずの宗教が異なる宗教の信徒を殺してもいいとしていること、さらには、同じキリスト教であってもカトリックとプロテスタント同士で平気で殺しあってきたことを知るにつけ、どうしても私はキリスト教を信じることができません。
テンプル騎士団の総長は選挙で選出されていた。これはローマ教皇と同じですね。
イスラム教徒の戦術は長い年月をかけて磨かれ、電光石火の奇襲を得意としていた。丸兜をかぶり、腰に矢羽の入った矢筒をぶら下げた騎兵が突然あらわれ、突進してくる。ぎりぎりまで近づいたかと思うと、馬の手綱を引き、ぐるりと回って、退却しながら矢を一斉に放つ。相手は不意打ちを受け、血を流し、混乱に陥る。こうした攻撃が波のように押し寄せ、騎兵たちは矢羽を雨あられのように降らせたかと思うと姿を消し、馬を代えて、新たな攻撃をしかけに戻ってくる。
400キログラムほどの軍馬を、片手が手をつかわず見事に操り、疾走する馬の上から重たい弓を引き、非常なまでの正確さで、敵の馬の首や頭、わき腹など、あちこちに狙いをつけて放つ。機動性の高い小グループで行動し、次々と押し寄せて敵に一息つく間も与えない。至近距離での戦闘では、矢を背中に吊り下げて剣を振るい、槍を突き刺す。
これに対して重要なことは、奇襲に遭遇しても、規律を乱さず反撃に出ること。当初の十字軍は、これが出来なかったようです。
テンプル騎士団は軍事能力と諜報能力を駆使し、イスラム教徒の軍団、そしてモンゴル軍団と互角に戦ったようです。しかし、その戦闘は無慈悲なもの。負けたら殺されるか、捕虜は奴隷として売られるか...。
本文のみで440頁という部厚い本ですが、この有名な騎士団の顛末(てんまつ)を知りたくて夏休みに一気読みしました。最後まで当初の期待が裏切られることはありませんでした。
(2021年4月刊。税込5390円)
梅雨のようなお盆でした。雨がやんだとき庭に出て少し雑草を抜きました。カボチャのツルが伸びているのをひっぱったら、雑草の中から大きなカボチャがころがり出てきました。これは植えたのではありません。生ゴミを庭に埋めたところタネから自生したのです。放っておいたら、ぐんぐんツルを伸ばしていきました。実は、四方にツルが伸びていたので、カボチャがゴロゴロとれるかなとは思っていました。
さて、問題は味のほうです。前に、自生したスイカを食べたら、形も色もスイカなのに、ちっとも甘くないということがありました。今度のカボチャは、まあまあの味で、ほっとしました。でも、最近のカボチャって、すごく甘いですよね。それに比べると甘さが足りませんが、文句は言えません。
今、サツマイモの葉が茂っています。秋が楽しみです。