弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年3月26日

蘇る、抵抗の季節

社会

蘇る、抵抗の季節
(霧山昴)
著者 保阪 正康・高橋 源一郎 、 出版 言視舎

60年安保闘争の意味を、今、問い返した本です。
私には60年安保は体験していませんので、まったく歴史上の話でしかありません。
保阪正康は戦前(1939年)うまれで、60年安保闘争のときには20歳。北海道出身で、西部邁(60年安保のころ、ブントの活動家だった。あとで保守へ転向)、唐牛健太郎(全学連委員長。右翼の田中清玄から資金をもらっていたことを告白)の二人を北海道時代に知っていたという。
1960年6月15日、京都府学連は、京都の円山(まるやま)公園に5万人を集め、反安保、反岸の大集会とデモ行進を敢行した。
すごいですね、5万人とは...。
高橋源一郎は1951年生まれですから、私のような団塊世代より少し下の世代となります。全共闘の活動家として、警察に捕まったこともあるとのこと。3度の離婚歴も踏まえているのでしょうか。人生相談の回答の奥深さには、いつも驚嘆しています。尊敬に値する人物として、私は高く評価していますが、今回の講演にも学ぶところが大でした。
高橋源一郎は、私たち48年生まれの世代について、「超まじめ」で「冗談が通じない」としています。ええっ、そ、そうでしょうか...と、反問したくなります。
年齢(とし)をとって、一番大切なことは、「教えてもらうことができるかどうか」だと言っています。教える人は嫌われる。なーるほど、ですね。私は、いつも若手の弁護士に法律そして判例を質問して、教えてもらっています。実際、知らないし、ネットで判例検索できないので、そうするしかないのです。私にあるのは経験だけです。
教わるというのは、実は能力。教わるには、柔軟な心、受け入れるマインド、消化吸収する能力が必要。教わるほうが、はるかに高難度な能力を要する。こっちが教わる気持ちでいると、学生たちも耳を傾けてくれる。教わる気持ちがないと、学生も聞く気がしない、そういうものだ。
これはまさしく至言です。
他人(ひと)の話をよく聞いて、そのうえで自分でよく考えてやってみる。年寄りが下手に口を出したらダメ。
なーるほど、ですね。異議ありません。40歳、50歳のころは知的に熱心ではなかった。人生も残り少なくなってくると、ますます知的欲求が高まってくる。まったく同感です。知りたいことがどんどん増えてきます。
コミュニケーションのとり方は、下の世代に尋ねること。聞きたいという欲望、これを知りたいという気持ちがないと、本当の会話は成り立たない。
二人の話に対するアンケート回答が面白いですね。74歳以下だと満足したというのが9割をこえているのに、その上の世代は厳しい評価が増えています。それだけ頭が硬くなっているということではないかと私は思いました。
全共闘運動については、昔も今も私はまったく評価していませんが、人間としてすばらしい人がいることは間違いないと考えています。
(2021年1月刊。税込1210円)

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