弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年2月22日

里山に暮らすアナグマたち

生物


(霧山昴)
著者 金子 弥生 、 出版 東京大学出版会

日本固有種であるイタチ科動物の二ホンアナグマの生態をずっとフィールドワークで追っていた女性研究者による本です。
フィールドワークをする学生・若者がとても少なくなっているという話が最後に出てきます。著者は女性のフィールドワーカーとして先駆者だったようです。
イタチ科のなかでも土を掘る方向へ進化したアナグマは、前肢が大きく発達し、鋭い爪のある大きな前足を有する。生活のおもな部分は地中の巣穴で過ごすため、おもに嗅覚に頼っていて、鼻が大きく発達している。
アナグマは走行は遅い。
アナグマのおもな餌はミミズ。秋には柿の実を食べる。
穴ごもりの前に体重を50%以上増やし、穴ごもりのあいだは餌をほとんど食べない。
10月半ばから3月下旬ころまで穴ごもりし、4月上旬に出産し、7月末まで授乳する。
けもの道には、高速道路と一般道路がある。うひゃあ、そうなんですか...。
著者は、けもの道の上を実際に四つん這いになって歩いてみたことがあるとのこと。えらいですね、学者って...。
フィールドワークをする人は、基礎体力が必要で、これがないとできない。しかし、同時にデータをきちんととってくる人でなければならない。当然ですよね...。
現場で状況にあわせて柔軟に機転をきかせることができる人、体力が届かない部分を努力と気力で補える人がフィールドワーカーにふさわしい。なーるほど、です。
アナグマはおもに夜行性なので、研究データの取得は夜間。昼と夜が逆転する生活を余儀なくされる。それは大変ですね。
アナグマの母は、ふだんおだやかだけど、出産する前に前年生まれの子どもは威嚇して巣穴から全部追い出してしまう。「涙の子別れ儀式」というものではない。
著者が1990年から6年間アナグマを観察したとき、「コニシキ」と名づけたアナグマがいた。おっとりした性格で、体重は10.7キログラム。アメリカ式の最新式の発信機を装着して、その行動を追跡した。すごく粘り強く観察したわけです。
日の出町には民家に上がり込んで餌をもらうメスのアナグマがいた。「フサチャン」という名前がついていた。写真もありますが、これまたすごいですね...。
この「フサチャン」は5年間に4回も出産して、13頭の子どもを育て上げたとのこと。よくよく観察できました(パチパチパチ)。
「アナグマにとっての世界とは、においによる世界である」
アナグマは嗅覚に頼って生きている動物だということです。
最後に、フィールドワーカーまで絶滅危惧種になりつつあるとされています。残念です。フィールドワーカーは「40歳でピーク」を迎えるとのこと。50代半ばの著者は、それでもまだフィールドワークをがんばっているようです。フレーフレー...。これからも楽しいレポートを期待しています。
(2020年11月刊。3800円+税)

 自宅に戻ると大型の封筒が届いていました。
 仏検の合格証書が入っています。1月末に受験したフランス語の口頭試問(準1級)は無事に合格していました。基準点23点のところ29点です(合格率は22%)。これで、準1級の合格証書は9枚目になりました。2009年以来です。いつもボケ防止のつもりで、とても緊張して受験しています。
 これからもフランス語の勉強は続けるつもりで、このところ、毎週の教室に向けて仏作文にがんばっています。

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