弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年1月23日

マルノウ(農)のひと

人間・社会


(霧山昴)
著者 金井 真紀 、 出版 左右社

ちょっと信じられない農法を紹介した本です。どんなに変わっているかというと...。
芽の伸ばしかた、枝の切りかた、実を摘むタイミングを工夫したら、肥料を一切つかわなくても作物は元気に育ち、農薬もいらない。穀物だって果物って、もちろん野菜もおいしくなるし、収穫量も増える。これこそ、地球環境を守りながら、もうかる農業経営だ...。
しかし、そうなると、農協の経営指導は成り立たなくなります。農薬も肥料も不要だなんてことになったら困りますよね...。
その農法は、とにかく枝をきつく縛ること。ミカンの苗木の新芽をギューギュー、きつく縛りあげた。すると、品評会で1位になるほど、新芽は大きく伸びた。ギューギューに縛られた枝は地面に対して垂直になる。すると、先端部でつくられたオーキシン(植物の成長ホルモン)が幹を伝わってどんどん下に移動し、根っこがぐんぐん伸びる。根が伸びると、今度は根の先端からジベレリンが出て、そのおかげで枝がぐんぐん伸びる。
ミカンを植えた地中に石ころがあると、根っこが石にぶつかってエチレンが多く出る。エチレンは接触刺激で出る。すると、エチレンは病害虫を防いで、実を成熟させるので、ミカンが甘くなる。要するに、植物ホルモンを活用しているという農法なのです。嘘のような話です。著者も私も、すっかり騙されているのでしょうか...。
枝は立ち枝を重視し、元気な枝を残してせん定する。
温州(うんしゅう)ミカンは500年前に日本で誕生した。中国から鹿児島に入ってきたミカンが変種して生まれているので、実は日本産。タネがほとんどないので、以前は、人気がなかった。
この温州ミカンとオレンジをかけあわせて生まれたのが「清見(きよみ)」。これから、デコポンとか不知火、せとか、はるみというスターが誕生した。うひゃあ...。
こんな農法もあっていいよな、そう思いながら読みすすめました。次は、ぜひ写真で確かめたいものです。
(2020年10月刊。1700円+税)

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