弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年12月12日

ぼくは縄文大工

社会


(霧山昴)
著者 雨宮 国広 、 出版 平凡社新書

太古の丸木舟で3万年前の航海を再現して、無事にたどり着いた話はニュースで知っていました。著者は、その丸木舟を石斧(せきふ)で掘り出してつくりあげたのです。
普通の大工と宮大工の経験を積んだうえで、縄文小屋の復元に取り組み、自らもその縄文小屋で生活するようになったのでした。そして、縄文時代の丸木舟をつくる話が舞い込み、苦労の末に完成させ、学者チームが黒潮に抗して台湾から日本を目ざして成功したのです。これは、歴史考証の手がかりにもなっています。
縄文時代の出土した部材にほぞがあるのが見つかった。ほぞとは、木材を組み合わせるために削った突起のこと。つまり、縄文小屋はほぞをつかって木材を組み合わせてつくられていた。釘がなくても家は建てられるのですね。
一番長持ちする木材は栗の木。
黒曜石は石斧には不向きで、天然のガラスで、とてもよく切れるナイフとして使える。猪や鹿の解体には抜群の切れ味。
縄文小屋づくりで一番大変なのは縄づくり。稲ワラはまだないので、自然に自生するカラムシやフジのツルから繊維を取り出す。いやあ、これは大変そうです。縄をなって2000メートルの長さにしたそうですが、それでも縄文小屋づくりの全部をまかなうことはできなかったのでした。
そして、丸太をどうやって切り出したか。石斧です。
打製石斧と磨製石斧がある。さらに、縦斧と横斧を使い分ける。
石斧は、生身の人間と同じように疲労を感じる道具だ。なので、壊れる前に休憩をとり、疲労をため込ませないことが必要。
いやはや、縄文式生活を実際にしている奇特な人が日本にはいるのですね。
表紙に、鹿皮を着て、石斧をもって快心の笑みを浮かべている著者の写真があります。ヒゲが伸ばし放題なのは、刈リコミバサミが縄文時代にはないからだそうです。いったい家族はどうしてるのだろうか...と、不思議に思ったことでした。
(2020年9月刊。860円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー