弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2020年11月19日
日本を開国させた男、松平忠固
日本史(江戸)
(霧山昴)
著者 関 良基 、 出版 作品社
日本の開国を断行したのは井伊直弼ではない。これがオビのキャッチフレーズです。
松平忠固(ただかた)は、幕末のころの信州・上田藩の藩主。老中のとき、徳川斉昭、井伊直弼と対立し、終始一貫して日本の開国と海外交易を主張し、日米和親条約、日米修好通商条約を調印のほうに引っぱっていった。その一方で、養蚕業を推進し、海外輸出の地盤を固めた。
聞いたこともない人物ですが、井伊直弼と対立し、三度も失脚したというのですから、タダ者ではありませんよね...。
日米和親条約が調印された翌年、徳川斉昭によって松平忠固は失脚に追い込まれた。
ところが、日米修好通商条約の交渉に際して老中に返り咲き、大老の井伊直弼とも対立したが、ついに条約の調印にこぎつけた。しかし、忠固は調印4日後に失脚させられた。
開国に反対していた政敵たちは忠固を憎み、敵視していたので、「政権内にはびこる俗論の根源」とか「元来姦詐にして僻見ある人」などと酷評した。
忠固の三度の失脚のうちの一番目は、水野忠邦の天保の改革を批判したことから奏者番と寺社奉行の双方を罷免されたことにある。水野が失脚したあと復権し、その後、大阪城代となった。このとき、信州・上田藩の絹織物の大阪での直営販売を推進した。城代による国元産品のトップセールスは、国元の上田と赴任地の大阪の双方から歓迎された。これまた、すごいですね...。
松平忠固は、徳川斉昭と城中で夜8時まで丁々発止とやりあった。これまた、すごいですね。斉昭の日記に本人が書いていることです。
斉昭は、ロシアの軍艦ディアナ号が下田に寄港しているとき、安政東海地震による大津波で大破したのを知って、ロシア人を襲撃して全員皆殺しにしろと建言した。いやはや、目先しか見ない狂人ですね。まるで、トランプです。
実際には、日本の大工が協力して新しく船をつくることにしたことで、日本の造船技術が飛躍的に向上したのです。他人(ひと)を助けると、結局は、自分たちも助けられるという典型です。
開国したらキリスト教が日本に広まることを心配する声に対して、忠固は、日本人の一部がキリスト教に改宗したところで、なんら不都合なことは起こらないと確信していた。なーるほど、広く自由な、リベラルな心の持ち主だったようです。
日米修好通商条約のとき、日本は輸入品の関税率を20%と定めていて、輸出品への関税率は5%とされている。この税率は日本が自らの意思で主体的に選択したもので、自主性のないまま押しつけられたものではない。そして、日本自らの意思で関税率も変更可能なように制度設計されていた。つまり、関税自主権だけはあったのだ。
そ、そうだったんですか...。知りませんでした。
松平忠固の子ども(忠厚)は、アメリカに留学し、アメリカ人女性と国際結婚した第1号となった。その子(キンジロー)は、メリーランド州エドモンストン市の市長に当選した(1927年)。アメリカ史上初の日系市長。
日本の関税率が20%だったのに、5%に引き下げられたのは、長州藩による下関海峡での砲撃事件のあと、その完敗によって、アヘン戦争による中国・清と同じように引き下げられた。下関戦争は、日本の関税自主権喪失をもたらした点で、日本における「アヘン戦争」だった。
なるほど無闇な攘夷運動は、かえって日本を奴隷状態に陥れる危険があるわけです...。
信州・上田藩は幕末から明治初期にかけて、日本最大の蚕種の輸出藩だった。明治3年(1870年)の日本からの蚕種輸出の半分近い45%が上田産だった。
幕末期の実際をこの本によって、また新しく知見を得ることができました。著者は信州・上田出身です。郷土愛に燃えた本でもあります。
(2020年7月刊。2200円+税)
1週おきに大阪そして東京へ新幹線で行きました。本をたくさん読めて良かったのですが、片道3時間、5時間、席でじっとしていたのが良くなったようで、帰宅した翌日から腰にきました。長くすわっていて立ち上がるとき、車からおりようとして腰をひねるとき、ぴっぴっと鋭い痛みが走ります。福岡まで電車に1時間も乗っていると、すぐには立ち上がれないほどの痛みです。歩くのはなんともありません。
1週間、様子をみて、ついに整形外科に行きました。レントゲンで骨に異常はないとのことで安心しました。腰に注射をうってもらい、コルセットをつけて、痛み止めの薬を飲んでいます。
これも年齢(とし)をとったせいですね。やはり東京へは飛行機に限ります。
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