弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年11月14日

蓼食う人々

人間


(霧山昴)
著者 遠藤 ケイ 、 出版 山と渓谷社

蓼(たで)食う虫も好き好き、とはよく言ったものです。
カラスを食べていたというには驚きました。フクロウを囮(おとり)にしてカラスを捕り、肉団子にして食べたというのです。カラスは赤肉で、歯応えがあって味わい深いそうです。カラスって不気味な真っ黒ですから、私なんかとても食べたいとは思いません...。
サンショウウオは、皮膚から分泌する液が山椒(さんしょう)の香りがするとのこと。知りませんでした。
野兎(のうさぎ)は、各家庭でつぶした。肉だけでなく、内臓から骨、毛皮まで無駄なく利用できる。野兎は、「兎の一匹食い」と言われるほど、捨てるところなく食べられる。なので、野兎のつぶしは、山国の人間の必須技術だった。野兎は鍋に入れる。味は味噌仕立て。白菜・大根・ネギに、スギヒラタケやマイタケを入れる。そして、別に野兎の骨団子をつくって、子どものおやつにした。肉が鶏肉に似ていて、昔からキジやヤマドリの肉に匹敵するほど美味なので、日本では野兎を一羽、二羽と数える。
岩茸(イワタケ)は、標高800メートルほどの非石英岩層の岩壁に付く。山奥の比類なき珍味だ。ただし、岩茸は、素人には見つけるのが難しい。1年に数ミリしか成長しない苔(こけ)の一種で、キロ1万円以上もする。
鮎(アユ)は、苦味のあるハラワタを一緒に食べるのが常道。なので、腹はさかない。頭から一匹丸ごといただくのが、せめてもの鮎に対する供養になる。
オオサンショウウオは、200年以上も生きると言われてきた。実際には野生だと80年、飼育下でも50年は生きる。
ヒグマは、もともと北方系で、寒冷な環境や草原を好み、森林化には適応できなかった。
敗戦直前の1944年に新潟県に生まれ育った著者は、子どものころ、野生の原っぱで、ポケットに肥後守(ヒゴノカミ。小刀)をしのばせて、カエルやヘビ、スズメや野バトを捕まえて解剖して食った。そうして、人間は何でも食ってきた雑食性の生き物だということを痛感した。
よくぞ腹と健康をこわさなかったものだと驚嘆してしまいました。
(2020年5月刊。1500円+税)

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