弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年10月20日

弁護士になった「その先」のこと

司法


(霧山昴)
著者 中村 直人、山田 和彦 、 出版 商事法務

ビジネス(企業法務)弁護士として名高い著者が、所内研修で若手弁護士に話した内容がそのまま本になっていますので、すらすら読めて、しかも大変面白く、実践的に約に立つ内容のオンパレードです。
「企業法務の弁護士は、大半がつまらない弁護士である」、なんてことも書かれています。問われたことしか答えない、「それは経営マタ―だから、これ以上は、そっちで考えて」と知らん顔をして逃げる弁護士を指しているようです。
企業のほうからみると、大半の企業法務の弁護士は物足りない。上場会社の大半は、今の弁護士に満足していない。彼らは、常に優れた弁護士を探している。なーるほど、ですね。
昔は法務部に30年もつとめているという猛者(もさ)がいたが、今では法務担当も4年から5年でどんどん変わっていく。なので、新しい弁護士も喰い込む余地があるというわけです。
評価の低い弁護士は、結論を言わない、ムダにタイムチャージをつけて請求してくる。自己保身ばかり気にする、お金くれとうるさい...。
高い評価の弁護士は、仕事は速く、答えを明快に言い、その理由を説明してくれる。目からウロコの言葉をもっている。これまた、なーるほど、ですね。
法律論点は、事実関係の調査のあとに考えること。先に理屈を考えて、それに事実をあわせてはいけない。それでは説得力のない机上の空論になる。企業法務は、しばしばそれをやってしまう。頭のいい人の弱点。
血の通っていない主張は裁判官の心を打たない。先に法律ありきっていうのは、絶対にダメ。
楽しく仕事ができる弁護士が、一番良い弁護士。
弁護士、誰もが1件や2件くらい、気の重い事件をかかえている。いやだなあと思って逃げていると、犬と一緒で、追いかけられる。なので、気の重い事件は後まわしにしない。依頼者には正直に、そして正義に反する仕事はしない。
勝ったときには、しっかり喜ぶ。
毎日にスケジュールも中長期的なスケジュールも、自分で管理する。自己決定権をもつことが幸せの源泉。
会議は2時間以内。
書面を書き出したら一気に書く。途中で別の仕事をしない。文章が途切れてしまう。
起案するのは若手。それに先輩が深削する。そうやって学ぶ、
大部屋だと電話の受けこたえまで自然と身につく。
私よりひとまわり年下のベテラン弁護士ですが、さすがビジネス弁護士のトップに立つだけのことはある話の内容で、大変共感もし、勉強にもなりました。
(2020年7月刊。2000円+税)

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