弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年9月12日

平湯真人詩文集(第四集)

司法


(霧山昴)
著者 平湯 真人 、 出版 自費出版

久しくお会いしていませんが、私の敬愛する大先輩の法曹です。
一番はじめに出会ったのは、著者が福岡地裁柳川支部の支部長裁判官、36歳でした。ちなみに私は、このとき30歳。二人とも若かったのです...。
演説会の呼びかけのビラ配りが公選法違反として起訴された事件では、そんなことを禁止する公選法のほうが憲法違反なので無罪という画期的な判決をもらいました。そして、当時、大牟田・柳川で盛んであり、行き詰まって大きな社会問題となっていた頼母子講でも判決をもらったことを覚えています。市民サークルに入って合唱もされていました。裁判官にも市民的自由があるんだよね、と思いました。
この詩文集にも柳川が「柳川をうたう」というタイトルで登場しています。その一部を紹介します。
「秋の月は 筑後平野を照らす どろつくどんの賑わう街の辻々を それも静まった街の家々を 楠の梢を 穂を垂れた田甫を、クリークの柳を 月はやさしく照らし続ける
今朝もまた船を出す 柳川の海へ 有明の海へ」
違憲無罪判決を出したのも最高裁にとっては不都合だったのでしょう。青法協会員の裁判官として支部まわりをさせられたあと、早くに退官して東京で弁護士になってからは、少年問題を扱う弁護士として活躍してこられました。
「施設出身の友人たち」という詩の一部を紹介します。
「Cさん、あなたは施設を出て早く結婚されました 後輩の面倒もよくみて兄のように慕われ、やがて子どもが生まれ、奥さんに協力して育児に熱心だった
そのあなたが、『子どもに嫉妬してしまう。自分はこんなにしてもらわなかったと思ってしまう』と言うのを聞きました
私は黙っているばかりでした」
持病のパーキンソン病が、今おとなしくしてくれているので、読書が出来ているとのこと。この詩文集は、20代の第一詩集、50代の第二、第三詩集に次いで、70代も後半になって出した第四詩集なのです。
子どもの代弁支援のためには詩が武器として有効であることも実感して、第四詩集を刊行したと書かれています。
病気と共存共「栄」しながらの、著者のご健闘、ご健筆を心より祈念します。
(2020年8月刊。非売品)

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