弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年8月28日

告白

日本史(戦前)


(霧山昴)
著者 川 恵実 、 出版 かもがわ出版

岐阜・黒川の満蒙開拓団73年の記録というサブ・タイトルのついた本です。2017年8月に、NHKのEテレ特集が本になったものです。衝撃的な内容です。
岐阜県の黒川開拓団650人は日本敗戦に孤立し、中国人から襲撃されていた。そこで、開拓団が生きのびるため18歳以上20歳前後の未婚女性15人をソ連兵に差し出し、「性の接待」をし、そのおかげでソ連兵から護衛され、食糧などをもらって1年間生きのび、650人の団員のうち450人が日本に帰国することができた。
このとき「接待」した当時20歳の女性が顔と名前を出して、証言したのです。
黒川開拓団が入植した場所は、ハルピンと新京の中間あたり。開拓団に行った人は、日本でも生活に困窮していた人々。国策に応じて村をあげて満州に渡った。黒川開拓団の隣の開拓団は敗戦直後に270人が全員自決したところもあった。
黒川開拓団でも自決しようという声は強かったが、生きて日本に帰ろうと呼びかける人がいて、まとまった。そして、中国の匪賊を追い払ってもらおうとソ連兵に助けを求めに行った。
お母さん、お母さんって泣くだけ...。医務室に行くのも恥ずかしいよ。洗浄してもらうじゃない。子どもが出来たら困るのと、病気が移っちゃ困るのと...。
15人の女性のうち4人が性病や発疹チフスで命を落とした。
この本を読んで救われるのは、日本に帰国してから、開拓団仲間などと結婚し、子どもをもうけて、苦労しながらも幸せに暮らしたことが写真とともに紹介されていることです(もちろん、映像でも紹介されたことでしょう)。
ただ、日本の子どもたちに戦争の苦労の話をするときに、さすがに「性の接待」の話はしなかったとのこと。それはそうでしょうね、ちょっと難しすぎますよね...。
貴重な歴史記録を映像と写真で生々しく伝えてくれる本でした。目をそらしたいけれど、目をそむいてはいけない重たい歴史です。一読をおすすめします。
(2020年3月刊。2500円+税)

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