弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年8月11日

40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた


(霧山昴)
著者 デイヴィッド・J・リンデン 、 出版 河出書房新社

この本を読んで、私たちの脳についてさらに新しい知見を得ることができました。
たとえば、味覚です。いま、労災事故でアゴを負傷したため味覚を喪ってしまったという労災事故案件を扱っていますが、味覚を喪失するというのは、人生の最大の楽しみの一つである食事の喜びがないということです。なんという悲劇でしょうか...。
そして、この本によると味覚は消化にも関連しているというのです。
健康的で適切な消化を行うためには、食物と栄養素の摂取が予期され、身体が十分に準備を整えていなければならない。たとえば、胃の攪拌運動、腸の律動的な収縮、口内の唾液の分泌、血中への早めのインシュリン放出などの内分泌、栄養素を腸を通して血中に運ぶたんぱく質を増加させる分子反応など......。
脳とコンピューターを比較すると、脳の動作速度は最大で毎秒1000回の基本動作ができる程度なので、コンピューターの1000万分の1でしかない。精度の面でも、コンピューターのほうが脳より100万倍も優れている。
しかし、脳は大規模な並列処理ができるし、している。ひとつのニューロンが1000個のニューロンから入力を受け、また1000個のニューロンに出力する。こんなことはコンピューターには出来ない。さらに、脳のニューロンは、アナログの信号も使う。
他者を助けるというのは、哺乳類の基本行動だ。アカゲザルを10年間にわたって研究した結果、正常な社会的発達には、とくに同世代の仲間との社会的な触れあいが決定的に重要であることが判明した。
哺乳類であるというのは、単に身体的な問題ではなく、社会化により脳回路が形成されていなければならない。
恋愛と愛着は、私たちにとって非常に基本的なもので、生存にも非常に重要である。私たちは互いを必要とする。この世界で守ってもらうため、そして楽しみのために私たちは互いを必要とする。
人間とは何か、脳はどんな働きをしているのか、私の最大関心事です。
面白くて、一気読みしましたし、できました。
(2019年12月刊。2100円+税)

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