弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年7月18日

地磁気逆転と「チバニアン」

地球・宇宙


(霧山昴)
著者 菅沼 悠介 、 出版 講談社ブルーバックス新書

地球の磁場(地磁気)が180度ひっくり返る現象は過去に何度も起きていた。そして、いちばん最近(77万年前から13万年前まで)に起きた地磁気逆転の証拠が「チバニアン」なのだ。
そもそも、地磁気は、地球内部を源として、大気圏を遠く離れた宇宙空間まで張り出し、太陽からの放射線や太陽風だけでなく、遠い銀河から飛来する銀河宇宙線などからも地球の表層を守るバリアの役割を果たしている。もし地球に地磁気が存在していなかったら、地球の大気は太陽風によって剥ぎとられてしまい、地球に生命は誕生しなかった可能性がある。
金星や火星には、地磁気に匹敵する大規模な磁場は存在しない。かつて火星には地磁気に匹敵する強力な磁場が存在したが、40億年前に消滅してしまった。そのため、火星の大気は太陽風にさらされ、剥ぎとられて、水も蒸発してしまい、生命が存在する環境でなくなった。
金星も同じで、太陽風によって大気、ときに水が散逸してしまった。それによって、大気中の二酸化炭素が吸収できなくなって、現在のような灼熱(しゃくねつ)の環境となった。
ヨーロッパコマドリは地磁気を感知して北欧から地中海へ飛行する。目の中に地磁気に反応する受容体があり、生化学反応して、それを視覚的に感知できるようになっている。つまり、地磁気を視て飛んでいる。
いま地磁気の強度が弱まっている。このまま地磁気が低下したら、1000年から2000年後にはゼロになってしまう。そうすると、人工衛星は故障し、世界の送電網や携帯電話などの通信網、GPSにも大きな影響が出る。
地球は一つの大きな磁石であり、球体の永久磁石ではなく、揺れ動く磁石なのだ。
地球はまさしく揺れ動いている天体の一つなんだということを実感させてくれる話です。そして、人類をふくめた生物が、この地球上に存在しうるのも、貴重かつ幸運な確率の産物だということも自覚させられます。要するに、もっと足元の地球を大切にしようということです。コロナ禍のゴールデンウィーク中に読んだ面白い本の一つでした。
(2020年4月刊。1100円+税)

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