弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年6月10日

住民主権の都市計画

社会


(霧山昴)
著者 岩見 良太郎・波多野 憲男ほか 、 出版 自治体研究社

弁護士5年目くらいから10年間ほど区画整理をめぐる住民訴訟にずっと関わってきました。区画整理というから、はじめのころは何か道路を拡幅し、住宅地を前より住みやすくするための技術的な手法というイメージがありました。ところが、実は、とても政治的に運用されている行政手法だということを理解するようになりました。
そして、この本によると、世間には、もう区画整理の時代は終わったという人もいるようです。現実に、たんに換地操作によって、局部的な土地の入れ替えにすぎない事例もあるようです。
以前は、区画整理に反対ないし異議申立する住民運動がしきりに全国で起こりました。
「自分たちは、住むために土地をもっているんだ。売るために土地をもっているんじゃない」
住み続ける住民にとっては、区画整理で資産価値が上がったからといって、小住宅地にも負担を負わせるのには無理がある。庭を削ったり、住宅まで削ったりして「宅地利用の増進」は考えられない。そして、区画整理後には広い道路に面するようになったからといって、利用価値を損なう強い減歩は無茶であり、理不尽だ。なので、ノー減歩、ノー清算を住民の多くは望んだ(望んでいる)。
ところが、今や高齢化がすすむなどから住み続けるのが難しい状況が生まれている。やがて処分の時代がやって来る。
区画整理が実施されたあとの宅地は、ミニ開発地よりは、相対的には高く路線化評価される。
区画整理の認可状況は、1972年度に350地区1万3千ヘクタールをピークとして、その後2003年度からは100地区を下まわり、また、2017年度には、住民と「市」とは、お互いに助けあうこともなる。
区画整理をめぐる単語(キーワード)として、8コ。再開発、まちづくり、道路、清算金、駅宅地、探地減歩、住民運動くり出す、これをテキスト・マイニングをして解析する。すると、初期には、都市計画の技術知に関わる傾向があった。1995年あたりを境にして、「実践知」に変化してきている。住民の公共観は確実に「技工」から「実践」へ変遷しているように思われる。あとは、再び「協働」志向について国民的公論が交わされるような出来事が起こるのを待つしかない。よく分かりませんが、区画整理の手法も位置づけも変化しているようです。
区画整理の歴史をふまえた研究書の貴重な一冊だと受けとめました。
(2019年10月刊。1600円+税)

 町のあちこちにアガパンサスの花が咲きはじめました。わが家の庭にも咲いています。小さな青い花火のようで、まさに夏到来となりました。
 日曜日に孫と一緒にサツマイモの苗を植えつけました。この秋が楽しみです。鳴門金時などです。
 さらにチューリップを植えていた一区画を掘り起こして夏の花を植える準備をしたら、腰と左肘が痛くなり、いつものマッサージにかけ込んで、身体をほぐしてもらいました。こんなときは残念ながら身体の老化ぶりを実感させられます。

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