弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年6月 2日

サル化する世界

社会


(霧山昴)
著者 内田 樹 、 出版 文芸春秋

思想家であり武道家である著者が日本社会を鋭く切りつけています。
著者は団塊世代の最後の世代です(1950年生まれ)。東大仏文を卒業しています。フランス文学を専攻するというより、フランス語に書かれているものなら、何でも対象としていたとのこと。おおらかな時代だったようです。カミュも研究対象でした。今、コロナ・ウィルスのおかげで、カミュの『ベスト』が注目されています。私にはやはり『異邦人』です。
私は、弁護士になって以来、ずっとフランス語を勉強しています。ちっともうまく話せませんが、私には、フランス語を通して、世界へ門戸を開いておきたいという強い願望があります。それが、毎日毎朝、フランス語の書きとりにいそしむ根拠です。
安倍晋三は、日本の過去20年間の政治文化の劣化の「果実」だ。彼を見て、私たちは深く反省すべき。彼を生み出し、表舞台に押し上げたのは、私たちだ。彼を支持する人が今も4割もいる。そんな支持する人たちに「キミたちも、いろいろ辛いんだよね」と語りかけなければいけない。
彼らの言い分をきちんと聞き、自由な論議の場で、彼らの欲求を部分的にでも受け入れ、部分的にでも実現していく。そうしないと、これまでも今も安倍晋三やら維新を支持している市民たちの支持は得られない。非常に辛いことだし、うっとうしい。でも、これをやるしかない。「あんたら、頭おかしいよ」、なんて言っても何も始まらない。
アメリカ合衆国憲法は、そもそも常備軍の存在を認めていない。うひゃあ、ちっとも知りませんでした...。常備軍は、必ず為政者に従い、抵抗権をふるう市民に敵対することをアメリカ市民は経験的知っていたからだ。このように常備軍をもたないことを規定した憲法をもちながら、アメリカは世界最大の軍事力を誇っている。
フランスは、戦勝国として終戦を迎えてしまったため、敗戦を総括する義務を免除された代わりに、もっと始末におえないトラウマをかかえこんだ。
イタリアは、文化的には戦勝国であり、1945年7月に日本に宣戦布告したフランスはド・ゴールというカリスマがいたが、イタリアには、カリスマがいなかった。
 凡庸(ぼんよう)な知性においては、常識や思い込みが論理の飛躍を妨害する。例外的知者の例外的である所以(ゆえん)はその跳躍力にある。
 本当に大切なのは、「心と直感」ではなく、「心と直感にしたがう勇気」なのだ。そのとおりです。この「勇気」こそが、最後に求められるものなのです。
 成熟するとは、変化すること。3日前とは別人になること。
 いつもながらの鋭い指摘に出会うと、胸の奥深くまで短刀を突き刺されて、ハッとする気分を味わうことができます。
(2020年3月刊。1500円+税)

 ジャガイモを掘りあげたあと、今度はサツマイモを植えようと思い、いったん深く掘り起こして、コンポストに入れていた枯れ葉や生ゴミを埋めました。クワとシャベルを使っての久しぶりの力仕事なので、腰が痛くなりました。今は午後7時まで明るいので、7時にやめて風呂場に直行しました。
 庭のアスパラガスは、そろそろ終わりのようです。カンナの黄色い花が咲いて夏の訪れを実感しました。

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