弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年5月25日

その犬の名前を誰も知らない


(霧山昴)
著者 嘉悦 洋、北村 泰一 、 出版 小学館集英社

圧倒的な面白さです。ページをめくる手がもどかしく感じられました。
日本が初めて南極で越冬したのは1957年から翌58年にかけての1年間のこと。1958年2月、第一次越冬隊は無事に全員が南極観測船「宗谷」に収容された。引き続き第二次越冬隊が昭和基地で越冬するはずだった。ところが、悪天候のため急に中止となり、第二次隊も「宋谷」にひき戻された。すると、第二次隊のため昭和基地に残された15頭のカラフト犬は見殺しにされる...。
日本の国民世論は怒りに沸騰した。カラフト犬たちは、第二次隊員のため、逃げないよう鎖につながれたままなので、餓死するに決まっている。そして、大半はそうなった。
ところが、北大の犬飼教授は、1頭か2頭は生き延びる可能性があると予言した。
そして、1年後の1959年1月14日、第三次観測隊が昭和基地に到着すると、なんと、タロとジロという2頭が生きていたのです。
私も小学生でしたので、この感激ははっきりとした記憶があります。日本中が震えました。
捨てられた恨みからかみついてくるのを心配し、犬の世話係は恐る恐る近づいたのでした。そして、タロもジロも自分の名前を呼びかけられて、やっと安心して近寄ってきたといいます。恨んではいなかったのでした。顔をペロペロなめて、とても喜んだのです。
そして、この本は、実はタロとジロが生きのびたのには、この2頭をリードした先輩犬がいたのだということを解き明かしています。それは、1968年2月に昭和基地の近くで1頭のカラフト犬の遺体が発見された事実にもとづく推測です。この事実は、同時に行方不明になっていた福島隊員の遺体が見つかった報道のかげにひっそりと隠れてしまい、報道されることがなかった。
タロとジロは発見されたとき、やせおとろえていたのではなく、丸々と肥え太っていた。いったい、何を食べていたのか・・・。それは、昭和基地にあった貯蔵庫の食糧品などをリーダー犬とともに掘り出して食べていたのだろうと推測されています。そして、タロもジロも、昭和基地に着いたときには幼犬だったのでした。これも生きのびた理由のようです。
なーるほど、と思いました。
ペンギンとかアザラシを襲って食べて生きのびたという説もありましたが、それは、あまり現実的ではないようです。
この本の面白さは、このような謎解きもさることながら、カラフト犬を犬ゾリ用に訓練し仕立て上げていく過程、南極での犬ゾリ旅行の大変さは、まさに手に汗握る迫真の状況描写の連続だからです。
カラフト犬にも、本当にいろいろ性格の違いがあること、極限状態に置かれたら、ヒトもイヌも一緒になって困難を乗りこえようと心を通わせる必要があるというところに、心打たれました。犬にも感情があり、プライドがあり、根性があるのです。あとは、それを人間がどうやって奮い立たせるか、これは信頼なくしてはやれないことです。
5月の連休最後の日曜日、寝食を忘れて(ウソです。でも、おかげで昼寝しそびれてしまいました)一心不乱に読み通しました。
少しでも犬に関心のある人には絶対におすすめの本です。犬って、やはりすごいですね...。
(2020年4月刊。1500円+税)

 土曜日の夜、うす暗くなったので、孫たちとホタルを見に行きました。歩いて5分のところに小川があり、まさにホタルが乱舞していました。これまでになく、たくさんのホタルがフワリフワリと明滅しながら漂っていました。ときどき手のひらに乗せてホタルの光を手でも感じました。孫の手のひらにも乗せてやると喜びます。
 土曜日の午後は、梅の実をちぎりました。バケツに2杯とれ、早速、梅ジュースを味わうことができました。
 日曜日の午後はジャガイモ掘りです。池中から大小さまざまなジャガイモが姿を見せ、孫も大喜びで、夕食のとき小さなジャガイモをバタジャガでいただきました。
 田舎に住む良さをしっかり味わっています。

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