弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年5月20日

幸福の科学との訣別

社会


(霧山昴)
著者 宏洋(ひろし) 、 出版 文芸春秋

幸福の科学の大川隆法の長男が父・隆法の実像を伝えています。まことに父と息子との関係は難しいものだという感想をもちました。
どうやら隆法一家は家庭的な落ち着きと親しみに貧しい雰囲気だったようです。
長男の著者は中学受験に失敗してから、隆法の後継者からドロップアウトしたとのこと。二男の裕太は麻布高校から東大法学部を卒業したのですが、離婚問題をおこしたので、一気に格下げされたとのこと。
今は、後継者として最有力なのは長女の咲也加。咲也加は2代目教祖を目ざしていて、名誉欲、権力欲、自己顕示欲の3つがとても強い。副理事長兼総裁室長。『娘から見た大川隆法』という本を書いている。咲也加は性格がきつく、内弁慶で、友達がいない。
著者は東大法学部に進んでほしいという父・隆法の期待を裏切り、青山学院大学法学部に進み、今は映画づくりにいそしんでいます。後継者候補からはずれたあとも、教団ナンバー3の理事長になったこともありました。3ヶ月でやめたあとは父親・教団のコネで、清水建設に入社しています。
著者は女優の清水富美加との結婚を父・隆法にすすめられ、断りました。清水富美加について、感情の浮き沈みが激しく、二面性がある人、幸福の科学の教義はほとんど読んでおらず、理解していない。しかし、非常にビジネスライクな人物なので、著者との結婚についても打算したのではないか...としています。
著者は大川隆法について、一度も神だと思ったことはないが、感謝の気持ちでいっぱいだとしつつ、自分にとっては、路傍の石の一つ、取るに足らないガラクタにすぎないと言い切っています。
大川隆法という人間は、自分だけよければいいという考えがすごく強い。自分の考えに異論をはさむ人間は徹底的に叩く。
大川隆法の妻・きょう子はずっと教団ナンバー2だった。きょう子本人は、自分のおかげで教団が大きくなったと主張しているが、組織が大きくなりすぎて、そのポジションをつとめることが能力的に難しくなり、隆法と夫婦ゲンカして教団から追い出された。
きょう子は、離婚するまで、警察に相談に行ったり、自宅保全の仮処分を申請したりしている。
隆法は妻きょう子とは実は離婚したくなかったのだと思う。
両親の離婚に際して5人の兄弟(姉妹)が集まり、「きょうだい会議」を開き、全員一致で父親につくことを決めた。稼いでいる父親につかないと、生活できなくなることが最大の理由だった。
きょう子はヒステリーがひどい人。これに対して、父・隆法の唯一良いところは、ブチ切れることがないこと。怒ったら、怒鳴りつけるのではなく、10分間も2時も、ネチネチ説教するタイプ。暴力は一切ふるわない。むしろ、母・きょう子は瞬間湯沸かし器みたいで、よくぶたれた。
幸福の科学の信者は、公称で1100万人というが、実数は1万3000人だと著者はみています。2019年の参議院選挙の得票は20万票だった。そして、信者の高齢化のため財政状況が悪化している。信者の平均年齢は65歳。これは64歳の大川隆法と同じということ。
2011年のお布施は300億円あった。このほか、本の売り上げや各種祈願の代金収入などがある。
大川隆法の話は、とにかく長い。聞いているうちに疲れてしまう。内容はたいしたことないけれど、何時間も聞かされると、「すり込み」効果があって、洗脳される。
著書は500冊をこえる。大川隆法の「霊言」は、台本もリハーサルもなく、全部アドリブで2時間は軽く話し続ける。
教団の信者は、自分の意思をもたず、自分では何も決めずに動くことができる。これがカルト宗教の一番の魅力だ。
教団から懲戒免職され、6265万円という巨額の損害賠償請求裁判の被告とされていることから、いくらか割引して受けとめるべきかもしれませんが、書いてあることのほとんどは、よく分かることばかりでした。あなたにも一読をおすすめします。
(2020年3月刊。1400円+税)

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