弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年4月26日

「フランスかぶれ」ニッポン

フランス


(霧山昴)
著者 橘木 俊詔 、 出版 藤原書店

フランスをこよなく愛する日本人は少なくないと思いますが、私もその一人です。
毎日毎朝、フランス語を勉強しています。恥ずかしながら、もう50年になります。それだけの裁月をかけている割には、ちっともうまく話せないのが残念です。
著者はエクサンプロヴァンスに3ヶ月も滞在したことがあるそうです。私も40代の初めに1ヶ月近く大学寮で寝泊まりしました。ポール・セザンヌの描いたサンヴィクトワール山がよく見えました。今から10年前にもう一度行ってみました。落ち着いたいい町です。
フランスの小説が日本に与えた影響は大きいが、かなりの割合で不倫を扱っているので、日本ではおおっぴらに語ることのできるテーマではなかった。
マルクスやエンゲルスもバルザックの愛読者だったし、最近のピケティは、『ペール・ゴリオ』のなかから得られた統計情報を、庶民の生活水準にてらしあわせて、人々がいかに苦しい経済生活をしていたか数字で証明しようとしている。
文芸誌『スバル』(漢字は昴です)の主幹は森鴎外であり、編集者は石川啄木など。寄稿者は啄木24歳、北原白秋24歳、木下杢太郎23歳、高村光太郎26歳という若さだった。みんな若いですね...。
フランス映画もいいものがたくさんありますよね。戦前の映画『天井桟敷の人々』は傑作だと思いますが、間接的に戦争中のナチスへの抵抗の姿を示した映画でもあるんですね...。アラン・ドロンよりもフランスではジャン・ポール・ベルモンドのほうが演技も人気も上だということです。
フランスでは哲学がリセ(高校)の必須科目になっていて、バカロレア(高卒資格試験)の必修科目です。初日の午前中に3時間の自由記述の難問です。
関東大震災のときに憲兵隊(甘粕事件)から虐殺された大杉栄は、アナーキストとして活動していましたが、父親は軍人で、本人も陸軍幼年学校に入っていました。フランス語を勉強していて、フランス語はペラペラでした。ベルリンで開かれる国際アナキスト大会に参加要請されてパリに行き、メーデーの会場で話をしたら逮捕されて、有名なラ・サンテ監獄に収監されたのでした。そして、日本へ強制送還されて2ヶ月後に虐殺されてしまったのです。
ファッションそしてフランス料理の世界でも日本人が数多く活躍していることも紹介されています。この本を読んで、私の下手なフランス語も引き続き続けて、なんとかモノにしたいと改めて強く思ったことでした。
(2019年11月刊。2600円+税)

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