弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年4月 5日

船原古墳、豪華馬具と朝鮮半島との交流

日本史(古代)


(霧山昴)
著者 甲斐 孝司、岩橋 由季 、 出版  新泉社

古賀市から盗掘されていない遺物埋納坑が発見されました。2013年3月のことです。船原(ふなばる)古墳のすぐ脇の土坑(どこう)です。
今は、すごいんですね。掘る前に三次元計測とX線CTを使って、地中にどんなものが、どんな状態で埋まっているのか、具体的に予測できるのです。
土坑の幅も深さも80センチしかないので、人間一人がやっとの空間です。そこでどうやって調査するのか...。2本の木杭を地表面に置いて、ロープで足場板を支える空中ブランコ方式が採用されました。そして、地中のものを掘り出すのには液体窒素で瞬間的に氷結させ、掘り出したものを医療用ギプスでとり上げるのです。6ヶ月間で遺物ブロック500点を取り出しています。あとは、九州歴史資料館(小郡市)の室内でじっくり発掘していきます。
すると、見事な金具が次々に発見されていくのでした。
金銅(こんどう)製歩揺(ほよう)付飾金具。唐草文を透彫(すかしぼり)した六角形の金銅板の中心にドーム状の台座があり、そこから支柱が立っている。支柱からは、傘骨状に8本の吊手が広がり、そこに歩揺がつく。そして六角形のコーナーごとに金銅板と一体となっているやや小ぶりの支柱が立ち、四本の吊手に歩揺がつく。きわめて精巧なつくりで、まるでシャンデリアのよう。そして、ガラスで装飾された金銅製辻金具と雲珠。鉛ガラスは緑色。見事な形と色です。
馬の頭を守るための馬冑(ばちゅう)、その他の馬具も見事なものです。そして、武器・武具も発見されました。
そこで、いったいこんな豪華な副葬品のある前方後円墳(船原古墳)の被葬者は誰なのか、が問題となります。
それまで有力な首長を輩出してこなかったこの地域において、6世紀末から7世紀初頭ごろに急に頭角をあらわし、前方後円墳を造営できるだけの力をえることができた人物で、高度な技術によって生産された貴重な国産馬具や船来の新羅系馬具を多く入手できるだけのつながりをヤマト王権や朝鮮半島と有していた。
遺跡には感動があると書かれていますが、まさしくそのとおりです。カラー図判があって、目がさめる美しさに驚かされます。
(2019年12月刊。1600円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー