弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年3月29日

フィンランド公共図書館

フィンランド


(霧山昴)
著者 吉田 右子、小泉 公乃ほか 、 出版 新評論

フィンランドは教育の点で世界から注目されている国ですが、その躍進の秘密は公共図書館の充実にもあるようです。
私の住む町は、恐らく財政悪化による支出削減のあおりを受けたのだと思いますが、前にあった移動図書館、要するに自動車で地域を定期的に巡回するものです、がなくなってしまいました。そして、図書館は駅から少し離れたところにあり、交通至便とはいかないうえ、駐車場も少ないので、市民や子どもがどれだけ利用しているか、心配です。
この点、フィンランドでは、学校のカリキュラムとして公共図書館に行くことが組み込まれているとのこと、うらやましい限りです。子どものころから図書館に行く癖がついていることは大変良いことだと思います。
フィンランドでは、学校図書館をもたない学校も多い。そのかわりに、公共図書館の利用が授業時間に組み込まれているし、公共図書館も子どもたちを対象とした図書館サービスに徹底的に取り組み、学校と連携している。保育園や小・中学校では、クラス単位で図書館を頻繁に訪問している。こうやって、図書館が人々の日常生活に織り込まれている。
ヘルシンキ市には博物館、美術館が6館あるが、公共図書館は、なんと37館もある。ええっ、ウソでしょと思わず叫んでしまいました...。
フィンランドの公共図書館は、基本的におしゃべり、飲食も自由。図書館イコール静寂という感覚はない。そして、図書館を仕事場にしている人も多い。
図書館は、すべての利用者を歓迎することが基本姿勢。そのため、ホームレスやドラッグ中毒者も利用者としてやって来る。そこで、ときに警察に来てもらうこともある。それでも、図書館が精神を落ち着ける場になっていることを願って職員は仕事をしている。
たいしたものです。写真をみると、どこも広々としたオープン・スペースとなっていて、気持ちよく利用できそうな雰囲気です。
私は日比谷公園内にある図書館で仕事(モノカキ)をしたことがありますが、静粛が絶対条件でしたし、みんな一心不乱に「勉強」している雰囲気でした。
館内には1年以上借り出されていない資料は並んでいない。
フィンランドの公共図書館にはコンピューターゲームも備えつけてある。高額なゲームを購入できない家庭の子どものためだ。
盗難防止装置なしで本を貸し出している。これには著者たちも驚いています。
公共図書館は、生涯学習を約束する(保障する)場所だ。
いやはや、フィンランドが「読解力スキル」で世界一になっている理由をよくよく理解できました。日本でもぜひ、そうしてほしいものです。いい本です。あなたも、ぜひご一読ください。
(2019年11月刊。2500円+税)

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