弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年3月24日

地域から創る民主主義

社会


(霧山昴)
著者 宮下 和裕 、 出版 自治体研究社

いまは「危機とも転換ともなりうる、せめぎあいの新しい時代」だと、この本にこう書かれていますが、まったく同感です。
臆面もなく嘘をつき通し、証拠はすべて「処分」して国民の目にふれないようにして、追及されたら平然と開き直るアベ政治がまかりとおっています。少なくない国民は怒っていますが、「多く」の国民は、またかと呆れ、怒りを表明することがありません。でも、いつまでもこんな状態が続くほど日本国民はバカではないと私は確信しています。今は、政治の大転換の直前にあると自分によくよく言い聞かせているのです...。
著者は、日本国憲法がなぜ70年も続いたのかを改めて考えています。
憲法制定時の主要な政治勢力、GHQも日本政府も、そして共産党も、誰も憲法がこんなに70年も存続するとは思っていなかった。憲法制定にかかわったGHQ、マッカーサーや日本政府、政権担当者によって、早くもその制定直後に見捨てられた日本国憲法なのに、なぜ70年も改正されることなく続き、成文憲法としては世界で最長命の憲法となったのか...。
それは、憲法自身が、人類の、世界の到達点を示すものであり、日本国民とアジアの民衆の願いに合致していたから...。
まったく、そのとおりです。歴代の自公政権によってキズだらけにされてはいますが、今なお9条ふくめ、しっかり生きていると言うことができます。私たちの毎日の暮らしと平和をギリギリのところで守ってくれているのが、今の日本国憲法です。
1968年6月に、アメリカ軍のファントム戦闘機が九大構内に墜落したとき、著者は九大の全学自治会副委員長(あとで学友会中央執行委員長)でした。つまり、九大ジェット機墜落事故に関する抗議行動の先頭に立っていたのです。
2019年6月には、九大でかつては反目しあっていた学生運動各派が思想の違いをこえて統一集会をもったことも紹介されています。「暴力」の問題は簡単にタナあげすることは出来ませんが、考え方の違いはわきに置いて、今のアベ政治は許さないという点で一致した集会として成功したようです。といっても、みんな70歳をこえています。今の若い人たちに、この成果をどうやって伝承するかが私たちの切迫した課題となっていると思います。
大牟田出身の著者は自治体問題を扱う団体の専従事務局長として長く活躍してきました。この3年間の論稿をまとめて本にしたものですが、これで6冊目とのこと。地方自治と日本の民主主義の発展のために今後ひき続き活躍されんことを心から願っています。
(2020年3月刊。2000円+税)

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