弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年3月13日

汚れた桜

社会


(霧山昴)
著者 毎日新聞・桜を見る会・取材班 、 出版 毎日新聞出版

いつまで「桜」やってるんだよという声を聞かないわけではありません。でも、「桜」は簡単に見過せるようなシロモノではありません。いま深刻な問題となっているコロナ・ウィルス感染にしても、政府がどこまで真相を国民に公表しているのか、その施策はどうやって決まったのか、隠されたらいけないことは明らかです。いや、そんなの必要ないといったら、それは民主主義ではありません。独裁政治でしかなく、それでは日本は滅びてしまいます。
「桜を見る会」で問題となっているのは、安倍首相が公費を使って選挙民を買収していたのではないかという公職選挙法違反に該当するか否かの問題です。イエスなら、安倍首相は、かつての田中角栄首相のように逮捕され、直ちに失職することになり、またそうしなければなりません。
この本は毎日新聞の取材チームの一連の行動をまとめたもの。取材班は、まるで「脱法内閣」ではないかと思ったという。それも、うべなるかな...。そう思わせるに十分な内容になっています。
不思議なことに、安倍首相について公選法違反の疑いが濃厚なのに、捜査当局が動き出している気配はありません。それどころか、安倍内閣は検察庁のトップに自分の息のかかった人物をすえるべく、従来の法律と法解釈を無理矢理にねじ曲げようとしているのです。
「桜を見る会」の前夜祭のホテル・ニューオータニの1人会費5000円というのは、明らかにうさんくさい。超一流のホテルでのパーティーが1人5000円で出来るはずもないし、安倍首相の後援会主催なのに、安倍首相が政治資金規正法にもとづく届出(報告)をしていないというのも
違法行為であることは間違いない。こんなことはホテルの経理内容を司法当局が強制捜査すれば、すぐに判明することだと思いますが、司法当局は安倍首相の前に立ちすくんでしまっています。
そして、共産党の国会議員が資料要求したら、なんと1時間後に、招待者名簿はシュレッダーにかけてしまったので存在しないと内閣府は答弁した。高性能の大型シュレッダーにかけたというが、電子データは残っているはずなのに、それも同時に消去してしまったという。ありえないことを平気で答弁する高級官僚たちの顔を見ていると、怒りよりも哀れみを感じてしまう。
また、招待者枠のなかに、「私人」であるはずの「昭恵夫人枠」があることを内閣官房は国会答弁で認めた。「私人」である首相夫人が公費(税金)をつかって開催される「桜を見る会」に自分の好みの人たちを招待できるなんて、政治の私物化という以外に言いようがない。
悪質マルチ商法のジャパンライフの山口会長を安倍首相が「桜を見る会」に招待し、山口会長は安倍首相と一緒の写真を会員に示していたことも明らかになった。すると、安倍首相は山口会長について「個人的関係は一切ない」と答弁したが、実は安倍首相の父、安倍晋太郎外務大臣と山口会長はニューヨーク訪問をしていて、このとき安倍首相も秘書官として同行していた。
ジャパン・ライフに投資した人、つまり大金をだましとられた人たちは山口会長が安倍首相とも親密な関係にあることを示されて安心していたのだから、安倍首相の責任が重大であることは明らかだ。
この本は、昨年11月8日の田村智子議員(日本共産党)の質問を発端とする「桜を見る会」にまつわる安倍首相の公選法違反事件の真相を手際よくまとめたものとして、いま全国民必読のものだと思います。ぜひ、あなたもご一読ください。
(2020年2月刊。1200円+税)

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