弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年2月13日

こどもたちのライフハザード

人間


(霧山昴)
著者 瀧井 宏臣 、 出版  岩波書店

ライフハザードって何・・・?一言でいうと生活破壊。もう少しニュアンスの違った生活の崩れ。それが、現代に生きる子どもたちに起きているという警告の書です。
こどもの体温は、1日のうちに0.6度から1度のあいだで変動し、季節によって異なるが、36度から37度のあいだで推移するのが普通。そして、通常は夜に眠っているあいだ体温は低く、朝に目が覚めてから次第に上がっていき、午後3時から4時ころをピークとし、それからまた下がっていく。
ところが、低体温の子は、生体リズムが3.4時間ほどうしろにずれてしまっている。朝、眠っているときの低い体温で起こされて、体温が上がらないまま保育園に来る。これでは、ボーっとしているのは当然だ。また、夜になっても体温が高いため、なかなか寝つけないという悪循環に陥っている。
赤ちゃんのころは体温が高い。通常は、3歳ころに体温調節機能が整って安定してくる。ところが、高体温の子は、体温調節機能が整っていない。つまり、赤ちゃんのころの状態が続いている。
表情が乏しく、あまり泣いたり笑ったりしない赤ちゃんが目立つ。
保育園で「気になる子」のほとんどが、夜間の睡眠時間が少なく、しかも不規則になっている。その多くは情動が不安定で、他人に関心がない。そして、①無表情。②理由なき攻撃性。③強いこだわりという三つのタイプに分かれる。
欧米では、中学生までは夜9時に寝るのがあたりまえ。国際的にみて、子どもの遅寝が社会問題となっているのは日本だけ。
子どもが大量の清涼飲料水を飲んでいると、ペットボトル症候群になる。これは、2型糖尿病の一種。甘い清涼飲料水が引き金になって、子どもが昏睡状態になるケースがふえている。
肥満の度合の高い子ほど、食べる速さが速く、食べる量が多く、しかもかむ回数が少ない。
肥満の度合が高いほど、依存型行動や攻撃型行動、自閉か多動型行動が多い。
コケコッコというニワトリ症候群。ひとり食べ孤食のコ。食事をとらない欠食のケッ。家族と一緒でも自分の好きなものをたべる個食のコ。肉やカレーライスなど、いつも決まったものばかりを食べる固食のコ。
親が、食についての子どもの要求をできるだけ受け入れている。嫌いなものを無理に食べさせず、子どもに訊いて喜ばれるものを出している。そのほうがムダやハズレがなく、作るのも食べさせるのも楽だから。
衣食住遊のなかで、食の地位は最下位まで下落している。遊びやレジャーのために食費を削るのは、あたりまえになっている。
症状が出る出ないは別として、今の大学生の10人に9人はアレルギー体質。
子どもにとって遊びは、身体機能や運動能力を鍛え、物事を工夫する知恵を養い、情緒や社会性を育てる重要な役割をもっている。人間として生き抜くための基本的な能力を身につける大切な機会なのだ。
実は、この本は2004年1月に出たものです。今から16年も前の日本の子どもの状況を問題視しているのですが、その後、事態が改善されたどころか、ますます心配な状況になっているのではないでしょうか・・・。孫をもつ身として、大いに考えさせられる本でした。
(2004年1月刊。1900円+税)

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