弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年12月27日

限界のタワーマンション

社会


(霧山昴)
著者 榊 淳司 、 出版  集英社新書

分譲タワーマンションの建造は、日本人の犯している現在進行形の巨大な過ちだ。
タワーマンションとは、一般に20階以上の鉄筋コンクリート造の集合住宅のことをいう。
タワーマンションを購入し、住んでいる人には近い未来に恐ろしい不幸がやって来る。
タワーマンションは、その建築構造上の宿命として高額な保全費用がかかる。それは通常のマンションの2倍以上。大規模な修繕工事は、およそ15年に1度の割合で必要とされる。築30年でエレベーターや給排水管の交換が必要となる。
タワーマンションは、外壁の修繕工事を行わなければ雨漏りが発生しやすい建築構造になっているので、定期的な大規模修繕が欠かせない。
タワマンの寿命は30年で尽きる。築45年をこえると住宅としては機能しなくなり、廃墟となる可能性が高い。
タワーマンションは、人間の健康や成育に悪影響を及ぼしている可能性がある。タワーマンションの上層階に暮らす子どもは、成績が伸びにくい。外に出るのが面倒な子は世界が広がらない。実体験の乏しい子は、成績が伸びにくい。
武蔵小杉では、10年間に14棟のタワーマンションがたち7000戸の住人が増えた。1戸3人とすると2万1000人だ。
住宅業界の人は超高層物件を買わない。彼らは、「買う奴がいるのだから、今売れたらいい」という「売り逃げの論理」で突っ走っている。では、彼らの住居は・・・。賃貸マンションに住み、何年かに一度、ひっこして生活している。
うーん、そうなんですか・・・。やっぱり分かっているんですね。
賃料が高くても、結局、そのほうが人生設計上おトクだということなんですよね・・・。
タワマンが本格的に竣工しはじめたのは2000年ころから。建築基準法による規制緩和が背景にある。
タワマンの「施工不良」があまり表面化しないのは、騒いだら資産価値に悪影響が出る、それでもいいのかと売主や施工会社が脅すからだ。
うひゃあ、それはひどい。
タワーマンションは、すべてがオーダーメイドで、物件によって工法が違う。つまり、まだ施工法が確立していない完成途上の状態にある。上層階の外壁修繕をどうするのか・・・。もはや高すぎて外に足場は組めない。屋上のクレーンから作業用のゴンドラを吊るしたり、壁に線路のようなガードレールを敷設したりするとしても、風速10メートル以上の強風下では作業できない。すると、1層分の作業に1ヶ月かかることがある。
多くのタワーマンションは、2022年ころに、1回目の大規模修繕工事をする。15年後の2037年には2回目の工事が必要となる。
売主は、引き渡しから10年を過ぎると、すべての保証を免れる。
タワーマンションは、電力が供給されて、エレベーターが正常に稼働していることが、大前提の住形態だ。この前提が崩れることなんて滅多にないと住人は安易な想定で生活している。
武蔵小杉のタワーマンションで地下室が浸水してポンプが止まり、トイレが使えなくなりました。そんなマンションに長く住めるはずがありません。
火災が起きると、住人が何台かしかないエレベーターに殺到する。
タワーマンションの住人のなかには、上層階に住むことがスティタスであるかのような価値観に感化されている。
いま福岡の赤坂あたりには次々にタワーマンションがたっていますが、あんな高層階で日常生活を過ごせるというのが、高所恐怖症の私には不思議でなりません。
(2019年6月刊。800円+税)

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