弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年11月 4日

秋元治の仕事術

人間


(霧山昴)
著者 秋元 治 、 出版  集英社

私は、『こち亀』を読んだことは1回もありませんが、それが毎週連載を40年間も続けていた人気マンガだということは、もちろん知っています。
その著者が40年間も休まずに毎週連載を続けられた理由を大公開した本です。
読んでみると、著者の才能が大前提ではありますが、なるほどと思うことばかりでした。
マンガの世界は先のことが予想できない。突然、終わりを迎えてもおかしくない。そこで、とにかく面白いものを描き、1回1回、乗り切っていくことだけを考えてやってきた。先のことまで考えない。変化を恐れず、常に新しいネタを仕入れ続けてきた。
好きなことだけをやってきた。仕事を苦痛だと思ったことは一度もない。
漫画家はネタを考えるのが仕事の根幹。ネタを考えるのが不得意な人は、漫画家には向いていない。
漫画家はリスキーな職業なので、深く考えることができる人なら、まず選ばない道。
何事もなかったかのように、変化なくずっと毎日続ける。これこそが集中力を持続させるコツ。いつまでもくよくよ悩まず、ある程度悩んだら、さっと切り換えて次に行く。
『こち亀』のレギュラー連載は、十分なストックをもっていたので、落ちるというピンチを感じたことはなかった。
この書評も20年近く続けていますが、この間、1日たりとも切れていません(ときに飛んだのは、アップ担当者が急に休んでしまったからで、私が原因なのではありません)。
そのためのスケジュール管理を厳密にやっている。時間は、自分から積極的に生み出さないといけない。1本の『こち亀』に初めは7日間をかけていたが、6日間に短縮し、5日間で仕上げるというペースを確立した。
仕事をするのは朝9時から夜7時まで。昼と夕には食事のための休憩時間を1時間ずつとる。残業はなるべく少なくし、徹夜はしない。社員も、きちんと休みをとり、タイムカードで出退勤管理をしている。
著者は午前2時までには就寝し、起床は7時半。このようにして時間をきちんと守ると、社会的つきあいもできるようになる。
ギリギリの仕事はしない。原稿はいつも早めに担当者に渡す。
ながら族で仕事をする。マンガを描くときにはFM放送(ラジオ)を流しっぱなしにしている。ラジオから、新商品の情報や最新のニュースが頭に入ってきて、次のマンガのネタになっていく。
ネットでの評価は見ない。そしてつまらない批判は無視する。ファンレターは読む。
本屋には気分転換をかねて出かける。
眠いときは、無理をせず、しばし仮眠をとる。健康を保持し、仕事を続けるための一番の特効薬は、悩まないこと。
私より4歳だけ年下の著者ですが、私の考えと著者のやっていることに共通するところが多く、大変共感を覚えました。180頁あまりの本ですが、立派な仕事術がぎっしりの本ですので、あなたにも一読をおすすめします。
(2019年8月刊。1200円+税)

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