弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年10月22日

日米地位協定

社会


(霧山昴)
著者 山本 章子 、 出版  中公新書

日米地位協定については、知れば知るほど腹が立ちます。やっぱり日本はアメリカの属国でしかないんだ・・・。このことを改めて強く認識させられる本です。
アメリカ軍が日本にいるのは、決して日本を守るためではないのに、少なくない日本人は依然としてアメリカ軍が日本に基地をもって存在しているから日本の平和は守られているなんていう間違い(錯覚)をしています。しかし、アメリカ軍はアメリカを守るために安上がりの基地を日本に置いているだけのことです。アメリカ軍の基地は真っ先に攻撃目標となるのですから、日本は守られるどころではなく、無理心中させられるような存在でしかありません。怖い話なのです。
たとえば思いやり予算。これは、日米地位協定の明文にもない日本の負担のこと。在日米軍の労務費や施設費を日本が私たち国民の納める税金で負担しています。今から40年前の1978年に始まり、32倍の2000億円にまでなっている。
うっそー、うそでしょと叫びたくなります。日本政府にお金がないわけではなく、こんなムダづかいをしているのです。許せません。
アメリカと日本の密約では、沖縄のどこでも基地にできる全島基地方式が確認されている。したがって基地の場所が特定されていないから、アメリカは好き勝手に基地をつくれるのです。ひどい話です。
ドイツもイタリアも、もちろんアメリカ軍とは、友好関係にありますが、アメリカに対して言うべきことはきちんと主張するという、独立主権国家としてのプライドをもってアメリカと交渉しています。当然のことです。日本人として、日本政府の卑屈そのものの対応は恥ずかしいばかりです。
たとえば、イタリアでは、アメリカ軍の訓練、作戦行動は事前にイタリア軍司令官の許可が必要。イタリア軍司令官は、アメリカ軍基地内のどこにでも自由に立ち入ることができ、アメリカ軍の行動を危険だと判断したら、ただちに中止させることができる。
これって主権国家として当然のことですよね。ところが、日本政府は、そんなことすらしようとしないのです。まさしく名実ともに日本はアメリカの従属国家でしかありません。悲しいです。
これだけ日米地位協定の屈辱的内容の問題点を鋭く指摘しながら、「あとがき」によると、著者は日米安保条約を支援する立場だということです。これまた信じがたい話です。どうみたって、首尾一貫しないと思うのですが・・・。
(2019年5月刊。840円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー